「凡庸な悪」を市民レベルで描いたような。BBBムービー、チェコ映画傑作選「火葬人」。

公式サイト
今、十三で開催中の「チェコ映画傑作選」のうちの一作品。
一人語りにといどき会話が飛び込むような観たことのない不思議なリズムを持つ形式で、
一人の男の狂気とも思える変容が描かれる。

これ、ほんまに、1968年のチェコスロバキア(当時)の作品なん?
共産主義体制で、こんなにラジカルな映画、許されたんやろか?
と疑問になって調べると、1968年って、ちょうど「プラハの春」のときなんやな。
だから、こんな表現が許されたんやろか。
それともテーマが表面上は反ナチスなので、許されたんやろか。
さらに調べると、やっぱり1共産主義政権が倒れる1990年まで、
上映禁止やったみたい。
そら、そーかもな。

とにかく恐ろしい。
普通の家庭の家族思いの父親が、
真面目ゆえに、布にインクが染み込むように、ナチズムに染まっていく。
しかも、彼の職業は火葬業。
そして、妻はユダヤ人。当然子どもたちにもユダヤの血が流れている。
と、なると、、、。

さらに恐ろしいのは、彼には何か仏教の輪廻思想に似た考えもあるみたいで、
不幸にもユダヤ人の血を引いてしまった家族を、
現世で助けるためには、、と思ってることやな。

それが、一人語りの呪術的な一定のリズムで、
とても普通のことのように淡々と描かれるもんやから、
ワシには、眠気というさらに強大な敵と戦うことになってしまった。

「凡庸な悪」を市民レベルで描いてる映画なんやろなあ。
冷静に判断したら、どう考えても狂ってるとしか思えない行為を、
正義として、行おうとしてしまう。
この映画の作者が、当時、アメリカに亡命してた
ハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」という概念を知ってたのかどうか分からんけど、
知らずに、この映画を作ってたとしたら、それはそれで、むちゃくちゃ怖いなあ。

こうやって思い出すのも、嫌なくらい怖い映画やったけど、
観てよかったなあ、とは思ってる。
「チェコ映画傑作選」他の映画も観にいくかどうか、迷うなあ。

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