避けては通れない映画やと思う。BBBムービー「四月の余白」。

※ネタバレ、あります。

公式サイト
一ノ瀬ワタルさん、いい役者やなあ。
決して上手いとは思わないんやけど、そんなのを超えて、
彼にしか出せない存在感を、しっかり持っている。
野鄙で、乱暴で、暴力的やけど、演技に嘘がなくて、リアルで、
どこか愛嬌があって、羨ましいくらいの真っすぐさを持ってる。
それって、役者として、得ようとしても得られない特質かもしれないと思う。

数日前、テレビの番組に一ノ瀬さん出てて、
お話聴いてると、どうやら、それを引き出したのは、
「サンクチュアリ」のときの江口カン監督やったみたいで、
なんだかすごく嬉しくなってしまった。

この映画でも、その特質は、すごく活かされてたと思う。

この映画の監督、吉田恵輔さんの作品って、
どれも痛くて、好きか嫌いかでいうと、
好きではないと言うしかないんだけど、
何か観ずにはいられない、避けては通れない、
引力を持った作品が多い気がする。

この映画も反吐が出るくらい、嫌なんだけど、
「ここを観なくちゃ、現在の日本を見てることにならないよ」と言われてる気がした。

きれいごとでは、どうにもならない世界、一歩進んで二歩さがるようなもどかしさ。
親のせいだけにはできないだろうし、子どもの責任というのも過酷だ。
だけど、このままでは、この子はどうなってしまうのだろう。

「他人の痛みを理解できない」本当に、そんな子どもがいるんだろうか?
とも思ったりするんだけど、
SNSに溢れる文字の暴力を毎日山ほど見せられてること考えると、
「あり得るかもしれない」と思ってしまう。

脚本が、よくできてることに感心してしまった。
ある意味の因果応報感。
主人公は、諦めないことで、自分でも気づかないまま、
父、息子、両方に向き合ってるのかもしれない。

安易なハッピーエンドにしない結末も、素晴らしい。
この問題、この映画ひとつで解決できる問題じゃない。
この映画だけなら、ハッピーエンドにできるかもしれないけど、
そうしてしまうと、現実は遠のいて、
せっかくこの映画で「私も同じ問題と向き合ってる」と思った人の手を、
離してしまうことに、なりかねない。

だけど、主人公が見せる変わらぬ態度に対する、
少年の微かな心の動きで、希望を感じさせる。
このほど良さ!!素晴らしい。

先生役の夏帆さんも良かったなあ。
どこかで聞いたことあるような、きれいごとで、
上から説教口調で、できるわけもない同僚に、
口を歪ませて、自分の髪の毛を引き抜く。
あのシーンは、常識を押し付ける世間一般の風潮と、
それではどうにもならん現場の本音を、
象徴的に表してる、ええシーンやなあ、思った。

あと、あの記者、さて、どう動くんですかね?
そこを描かないのも、SNSの匿名告発どころか、
マスメディアでも、自分が間違ってた時は、
ウヤムヤにしてしまう現代社会を象徴してるなあと、思った。
それで許される風潮の元凶って、
決して謝らない政治家から来てる気がするんですが、いかがなもんでしょう。

つまり、この映画、一次的には質が大きく変わってきた、
少年の非人間的な行動のことを書いてるけど、
その裏にある、今の日本社会全体の変化を描いてて、
その中でも、微かな希望を信じて生きていくことを描いてる映画なのかもしれない。
そう考えると、やはり避けては通れない映画やったんやなあ。

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