エドワード・ヤンの長編デビュー作にして、大傑作。BBBムービー「海辺の一日 4Kレストア」。

※やや、ネタバレあります。

公式サイト
エドワード・ヤンの未見の映画でした。
クリストファー・ドイルさんとのコンビで、初の長編作品やったみたい。
ちょっと長いので、躊躇したけど、
さすがエドワード・ヤンさん。
退屈せずに観られて、
「この内容やったら、この長さ、必要やな」と思わせる内容でした。

簡単に言ってしまえば、箱入り娘のような、台湾の地方のお嬢さんが、
一人で生きていこうとする成長物語やと思うんやけど、
その一つ一つのエピソードが巧みで、全体の構成も練りに練られてて、
「ほんまにこれだ長編デビュー?」と思う、
巧みなストーリー展開でした。

親元から飛び出し、「自分の判断で、自分の人生を決めた」と思うお嬢さん。
けど、それは単に依存先を変えただけで、
自分の力で人生を歩んでることではなかった。
きっと彼女は、そのことにあの海辺で気付いたのだろう。

いろんな時代の話が行ったり来たりするのだが、
その時代時代に合わせて、主人公の髪型が変化していくので、
ワシのような顔認識能力の低い人間も、
混乱することなく観られた。
それと同時に彼女の変化を観てる人にわからせる。
彼女が「依存」から「迷走」、そして「自立」へと精神的に、
脱皮していったグラデーションを髪型の変化で表現している。
巧みな手法やなあ、と感心した。

そして女性は、お母さんも含め、時代の流れ、
今まで家父長制の中で、自分として生きることを許されなかった女性である主人公が、
自分として生きていくことに影ながらでも応援してて、
父親や夫は、いまだに家父長制の現実に囚われてるかのような対比が面白かった。

家父長制や家制度の理不尽を、理解しつつも、
そう生きられなかった自分の望みを、妹に託すかのような兄の姿は痛々しかったなあ。
一番、家父長制の権化で、女性蔑視で、金の亡者のような、
夫の幼馴染の兄ちゃんが、けっこう最後にええところ見せるのも面白かった。

そして、その全体を包む、構成が素晴らしい。
兄の元恋人、今は正解的なピアニストとして活躍する女性との、
久しぶりの邂逅、というのが、映画全体の箱になってて、
エピソードは回想という形で語られる。
ピアニストの彼女は、主人公のひとつのロールモデルだったのだろう。
この構成があるので、
この物語は、主人公一人のエピソードではなく、
この時代の台湾の女性を描く、広い物語、
言わば、時代の肖像になってるのではないか、と思った。

「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」に繋がるテーマも、
しっかり感じられる、長編デビュー作にして、
大傑作であることは、間違いないと思います。

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