戦争の悲惨さを描きつつも、美しき少年時代を描く。BBBムービー「白パンと独裁者」。

※ネタバレあります。

公式サイト
少年の頃の思い出は、どこか現実と夢の境界が、あやふやで、
ときには、グラデーションのように、繋がってたりもする気がしたりする。
ましてや現実とは思えないような戦争が終わる前後、短期間住んだ町、
ところどころ、映像が夢なのか、現実なのか、
分からなくなる気がしたが、それはそれでいいのかもしれない。

終戦間際のドイツの片田舎の離島、母親の故郷に、
疎開のように移り住んだ少年。
そんな直接的には戦争被害のなさそうな村にも、
そこかしこに戦争の影は忍び寄り、生活を精神を脅かし、分断を産む。
これが戦争ってことなんやろな。
だけど、そんなことには関係なく、島の農村風景は限りなく美しい。

少年の父はナチスの将校らしく、離れて暮らす。
母は熱烈なナチス党員。ヒトラーに心酔してる。
だからこそ、ヒトラーの死亡、ドイツの敗戦と続く激動の中で、何かが崩壊する。
国家依存症、血統依存症の脆さを、この母親が体現してるんだろうなあ。
こんな人、今の日本にも多い気がする。
自分の外部に、自分のプライドを置くことの危うさを感じた。
この母親の場合、ドイツが敗れたことで、そのプライドは打ち砕かれるが、
たとえ、打ち砕かれなくても、外部にプライド依存することって、
つまらなくないのかな〜と、今の日本を頭に描きながら思っていた。

こんな状況なので、息子が、自分のアイデンティティに揺れるのも仕方ない。
純粋な島民ではなく、戦火から逃れてきた避難民でもない。
ヒトラーを信じ切る母親に違和感を抱きながらも、
誰より母親を愛して、母親のために走り回る。
あれだけ苦労して集めた食材を母に突き返された時の表情が、忘れられない。
あの瞬間、彼の中で何かが崩れ落ちる音が聞こえてくる気がするほど。

よそ者扱いする同級生もいるけど、あの親友と、その周りの大人たちの、
少年を見守るような、けど、言わなければいけないことは、
きちんと言うような姿勢が、温かかった。
だから、少年は、なんとか、全ての価値観が崩壊した後も、
生きていけたのだろう。

ワシの母親も、軍国少女だったらしく、
すべての価値観が裏返ったあの日のことのショックを、
教えてくれることがあった。
母親は、民主主義の正しさに目覚めて、
自己の崩壊を回避できたらしいが、
あの少年は、親友含め、周りの人の温かさで、
乗り越えてのではないかと思う。

あの親友の「本当の島民は、島を出ていく」という言葉は、映画には描かれてない、
その後の少年の支えになり続けたのではないだろうか。

最後のシーン、老人が、あの干潟に佇むシーン。
ああ!やはり、この映画は、老年になった、あの少年が、
その頃を振り返る物語なんや。
だから、美しいけど、夢か現実か境界がはっきりしないような、映像やったんや。
自分の気持ちと、映画がピッタリとシンクロしたような気がして、
あのラストシーンは、ものすごくジーンときた。
ずっと離れていたけど、彼は、やはり「本当の島民」だったのかもしれない。

きちんと戦争の残酷さを描きながらも、
その時代に一番多感な時期を過ごさなければならなかった、
少年の思い出も、美しく描いた映画だと思う。
悲しくも、切なくも、美しい映画だった。

蛇足になるかもしれないけど、
干潮の時だけ、メインランドに歩いて行ける干潟を挟んだ、立地、
西表島と由布島の関係を思い出した。

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