言葉少ないけど、雄弁。BBBムービー「SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース」。
公式サイト
ヴェンダースが製作総指揮に関わった、
ノルウェーの息を呑むような大きく、美しい一年を描いたドキュメンタリー。

ワシは、風の少ない日に、河口付近の流れのない川を見るのが割と好きだ。
川面の鱗のような波などは、ずっと見てても、まったく飽きない。
ワシの場合は、それは、川面だったり、三条大橋から見る北山だったり、
伊良部島の佐和田の浜だったりするのだが、
それは、人によって違うのかもしれない。
人はそれぞれに見飽きない風景を持っているのだろう。
この映画では、そんなフィヨルドの、見飽きない風景が延々と続く。
視点がミクロになったり、マクロになったり。
時間尺を伸ばしたり、縮めたり。
木や人間など対象物がないシーンが多く、
スケールがわからなくなったりもする。
水の流れがすごくゆっくりに見えるのは、
ハイスピードで撮ってるからなのか、
とんでもなく大きなスケールだからなのか。
冬のシーンでは色のない世界に出てくる氷河の青が、
ハッとするほど、新鮮で美しかった。
流れや展開はあるけど、ストーリーはない。
起承転結など、この大きな世界を、小さな頭で理解しようとする人間の編み出した、
小賢しい、おこがましい技なのかもしれない。
次第にそんな風に思ったりした。
自然は、起承転結など求めない。
毎年、同じように、ただただ繰り返す。
その中で自然に争わずに生きる老夫婦までが、
風景の一部として美しく見えてくる。
時には人間にとっては人命の失われる「災害」と言われるものも起こる。
そんな人間にとっては大事件も、
ここでは大きな流れの中の、小さな凹凸に見えて来る。
そんなことも、もちろんあるよね。
自然を中心に考えれば、当たり前のようにすら、思えてくる。
そして、なぜだか、一人一人の人間に終わりがあることが、
何か幸せなことのように思えても来た。
こういう自然を前にすると、
人間は、自分という存在のことを、
考え始めるものなのかもしれない。
ときどき映画を観てるのか、考え事をしてるのか、
分からなくなる瞬間があった。
ラストのシーンは、こんな自然の営みですら、変えかねない、
人新世のことを語っているのかもしれん、と思った。
それはとてつもない大きな罪ではないのだろうか。
こんなに言葉が少ないのに、雄弁な映画に、
出逢えたことは、幸福なことのように思えた。
昔、会社の先輩が書いたんやけど、
好きで、ずっと覚えてたコピー、思い出した。
「海を見ると、自分が小さく思えてくるのに、心は大きくなっている。」

