美しければ、美しいほど、影は濃くなる。BBBムービー「菊豆(チュイトゥ)」。
チャン・イーモウ監督の初期作品がデジタルリマスターで、
三週間、週替わり上映されてる。
公私共にコン・リーとパートナーやった時代で、
三作とも、コン・リーが主演だ。
「紅いコーリャン」はど年末の12月27日からだったので観逃してしまったが、
第二弾の「菊豆」は行ってきた。
絵は、どちらかと言うと、乾いてる感じで美しいけど、
中身は滑るくらいドロドロで、ドス汚い。
きっとこの物語が始まる前からも、終わってからも、
景色は、このまま、美しいままなんやろう。
そして、人の心も大きくは、変わらないのかもしれない。
ということは、過去にも、これからの時代にも、
こんなドス黒い物語は隠れてるだけで、存在してるんやろな、
と、考えてしまい、なんだか怖くなる。
悲しい連鎖だけれど、虐待された人は、
自分の子どもに虐待してしまうことがあるらしい。
ひとつの残酷は、人から人に伝わってしまう。
ましてや、親から子ども、という人間として一番初期の段階で、
刷り込みのように植え付けられた残酷が、
子どもに影響しないわけがない。
映像が美しければ美しいほど、
エロチシズムが深ければ深いほど、
この物語の残酷さの影は濃くなっていく。
なんだか中国政府の仕事ばかりやってるイメージの、
最近のチャン・イーモウさんには、あまり興味がないのだが、
この初期作品は、間違いなく名作だと思う。
国家が伝えたくないような暗部を曝け出すように、
描いている。
この問題は、もちろん今の中国にも残ってるだろうし、
今日本で世を騒がしている、
元国民的アイドルグループの人の問題や、
お笑い界の大物の問題にも繋がっている気がする。
個人個人では変われない人間の悲しいサガだからこそ、
制度そのもので変えていく必要があるのだと思う。
それこそが、現代民主主義国家が、
王政や独裁制と一線を画すところだと思うのだが、
世界は、今や、個人個人がモノのように扱われてた時代に、
逆戻りしようとしてるかのように思われることがある。
その動きを決して許してはならないと思う。
やはり、面白かった。
今日から始まった「紅夢」も、ぜひ観に行きたい。