人間が人間を苦しめる世界は、いつになったら終わるのか。BBBムービー『ヴィジョン・オブ・マフマルバフ』「子どもたちはもう遊ばない」「苦悩のリスト」。
イランのモフセン・マフマルバフ監督と、そのファミリーが、
二本のドキュメンタリー映画を発表したので、
続けて観てきた。


まずは「子どもたちはもう遊ばない」。
エルサレムで、パレスチナ人、ユダヤ人双方の、
戦争を望まない人々を2023年10月に追った
モフセン・マフマルバフ監督のドキュメンタリー。
おりしもパレスチナでの停戦の発表された日に、この映画を観ていた。
迷宮のような路地が複雑に絡み合うエルサレムの裏町は、
まるでこの町の民族の絡み合った住民たちそのものだ。
エルサレムに住む、パレスチナ人、ユダヤ人のリアルな日常。
こんなヒリヒリした中で暮らす、ワシは耐えられそうにない。
けど、それぞれ、どの町よりもエルサレムを愛している。
いつか人類が、本当に、人種や民族や宗教やイデオロギーの壁を乗り越えたとき、
エルサレムは、世界で一番象徴的な都市になるかもしれない。
最後の方に出てきた話、数少ない多民族の学校で育った子どもたちは、
兵役を拒むという。
友だちに銃を向けたくないから。
この話が、救いの方向を指し示してる気がした。
そして「苦悩のリスト」。
こちらは、モフセン・マフマルバフ監督の娘、
ハナ・マフマルバフ監督がスマホで撮ったドキュメンタリー映画。
2021年のアメリカ軍のアフガン撤退、タリバンの再侵攻で、
命の危機にさらされたアーティストや映画製作者をなんとか救おうと、
マフマルバフ・ファミリーが、寝る間も惜しんで、
必死にスマホで連絡を取りまくる映画。
いきなり撤退する米軍機に縋り付いて、
振り落とされる人々の映像から始まる。
彼らも、飛行機にしがみついたまま、
安全なところまで移動できるとは思ってないのだろう。
タリバンに殺されるよりはマシ、という気分なのか。
ワシの想像など、及びもつかない、
過酷な状況だということが頭に叩き込まれる。
詳細はよく分からないが、ずっと緊張感ある場面が続く。
そりゃそうだ。スマホだけを頼りに、人を救おうとするのだから。
しかも、全員を救える訳ではない状況、
ある意味、トリアージ。
身体的には問題のない人たちを、ふるいにかけざるを得ない、
過酷なトリアージ。
観終わっても、救われた気持ちは欠片も抱けない。
きっと今も、同じように命の危機にさらされてる人がいるのだろう。
世界は、少しずつ悪い方向に向かっているように思われる。
人間の叡智を、人々を救うため、
地球を救うために動かすのは、
どうしたらええのだろう。