「優しさを組織せよ」は、今の時代にこそ、大切なメッセージか。BBBムービー「桐島です。」
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ずっと観たかったのだが、なかなかタイミングが合わなかった、
高橋伴明監督の「桐島です。」をようやく観てきた。

すごく緻密に作られた映画やとおもう。
本棚の本一冊一冊までもが、
キャラクター作りに貢献してる気がした。
すごくいろいろ調べて、分からんところは想像でつなげて、
桐島さんが、どんな人生送ったかを綿密にトレースして、
脚本化したんやろうなあ。
ちょっと気弱やけど、どこにでもいるような青年が、
素性を隠して、生きる。
その中で生まれる矛盾、そういう状況でしか生まれない葛藤。
それでも消えない、学生運動に自分を向かわせた初期衝動。
その数奇な人生を描こうとしたもので、
事件そのものより、彼の人生に重心を置いた映画だと思う。
そういう意味では、これは、青春映画なんやろなあ、と思った。
その点で、同じ事件をモチーフにした足立正生さんの、
「逃走」とは、ちょっと視点が違うので、
ワシとしては、両方とも楽しめる映画ではあった。
武力闘争にこそ、絶対に行かないやろうけど、
桐島さんを学生運動に向かわせたそもそもの要因、
この社会の矛盾への怒り、やるせなさみたいなものは、
ワシにもあって、「もしワシがい同じ年に生まれてたら、
どうしてたんかなあ」と考えてしまった。
これは、「逃走」の時には、思わなかったことなので、
この辺、青春映画やからかもしれん、と思った。
主演の毎熊克哉さん、元々陰があって、好きな役者さん。
今まではどっちかと言うと、無頼だったり、野性だったりの中に、
陰がちらつく感じやったけど、
この映画では、ちょっと今までは対照的な、
ある意味、引っ込み思案で、ウジウジした男の役だった。
根っこは気弱で、ええ人なんやけど、
やはり状況もあって、陰が付きまとう役を好演してはった。
その気弱さが、ほんまに内面から染み出してきてる気がして、
「やっぱりええ役者さんなんやなあ」と改めて思った。
宇賀神寿一さん役の奥野瑛太さんも、いろんな映画でお見かけして、
それぞれ独特の存在感があって、好きな役者さんですわ。
音楽も良かった。
内田勘太郎さんのボトルネックが、時には風や風景を感じさせたり、
時には、登場人物の心情に寄り添ってたり、
主張しすぎず、ほんまに映画全体の伴奏として、機能してた。
劇中で歌われる河島英五さんの「時代遅れ」も、合ってたなあ。
何回歌うねん!と、ちょっと思ったけど。
圧巻は、最後の浅川マキさん。
申し訳ないけど、勘太郎さんや河島さんが吹っ飛んでしまうほど、
ギュンっと持って行かれて、涙がブワ〜〜〜っと溢れてきた。
宇賀神さんの「優しさを組織せよ」という言葉、
分断だらけの今の時代にこそ、
もう一度、声高に叫ぶべき言葉なんやと思う。
最後、高橋恵子さんが出てきたのが、ちょっと面白かった。
ストーリーとして、このシーンがある意味もわかるんやけど、
このシーンのためだけに、海外ロケしてるとしたら、
とんだ便乗嫁さん孝行やなあ。
まあ、合成かなんか、なんやろうけど。

