汚い。だけど、美しい。BBBムービー「バード ここから羽ばたく」。
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退屈が人の心まで蝕んでるかのような、イギリスの小汚い田舎町。
この町の男は、みんなクズでダメ、
女は、そんな男に翻弄されてみんな心に傷を負ってるかのよう。

フェンス越しにiPhoneで鳥の姿を追いかけるシーンで、
もう心を奪われていた。
後から考えると、ある意味、映画全体を象徴してるシーンやなあ。
映像は、ちょっと観たことのない美しさに溢れていた。
町も、住居も、薄汚れててガチャガチャとしてて、
絶対に住みたくないくらい、小汚いのに。
特に光が、何か悲しみと希望を同時に抱えてるような光が、
本当に美しかった。
ケン・ローチ監督を思わせるような、
社会の片隅で、もがき苦しいむ人たちを描いては、いるけど、
なんかもっと現代的で、その分リアルで、
なのに、詩的で、ファンタジックで、美しくさえある。
現実にはあり得ないファンタジーなシーンもあるのに、
ひとつひとつのシーンがリアルで、悲しくて、その分切なくて、
胸に突き刺さってきて仕方なかった。
貧困、お薬、その日暮らし、犯罪、自粛警察、
もちろん、離婚も再婚もあって、頭がこんがらがるくらいの男女関係、
社会的に見れば、子どもを育てるのに、最低最悪な環境なのに、
映画のあちこちに、濁りのない家族愛が散らばっている。
主人公の少女、やさぐれてるのに、寂しがりやで、
愛を求め続けてて、兄や弟、妹を愛してる気持ちが、泣けそうになる。
その父親、ほんまにええ加減で、
ある意味、家父長っぽく、我を通しまくるんやけど、
一番、底の方に流れてる愛情が、
真っ直ぐで、純粋で、さらに泣けてくる。
いつしか、この家族の誰もが愛おしく、かわいく思えて、
全員に幸せになってほしいと願っていた。
そして、バード。
彼は、もしかしたら主人公にしか見えない妖精なのではないか、
と思ったりもするのだが、
現実に暴力に巻き込まれたりもする。
妖精だとしても、現代の妖精は、かわいくキラキラしたままでは、
いられないのかもしれない。
音楽も、素晴らしかった。
アシッドで、乾いたBGMも、
暗いのに気持ちはあったかくなるエンデングテーマも、
親父が歌う、出鱈目な歌も、
すべてが、間違いなく、この映画になくてはならないものだった。
これを青春映画と括ってしまうのには、
いささかの抵抗はあるのだが、
また大好きな青春映画に出会えたのだなあ、と思うと、
あんなに寒々しい映像だったのに、
心は、ほっこり温かくなっていた。

