小銭の山とコーヒーと。
こないだの休日、ドトール的な店に入る。
前に並んでた路上生活者風おっさんが、250円のホット二つ頼んだ。
「ふたつ?」
奥の客席を見たら、やはり同じ系統のおばはんが先に座ってる。
カップルなのだ。
おっさんはポケットに手を突っ込む。
ジャラって音がして、小銭が撒かれる。
こんもり盛り上がるほどの山ができる。
おっさんの爪先が全部、垢で黒かったのを覚えている。
店の姉ちゃんが百円玉選んで500円頂こうとすると、
おっさんひとこと「小さい方から取って」。
姉ちゃん、イヤイヤ10円玉、50円玉を集める。
多少足りなかったようで百円玉も選ぶ。
さすがに1円玉5円玉はおっさんも堪忍してくれたようだ。
ぼた山のような固まりは平地になり、コインの数は
半分くらいになる。
おっさんはコーヒーを持って、嬉しそうにおばはんの席に向かう。
コインがベタついたのか、プライドがベタついたのか、
姉ちゃんは、一度手を念入りに洗ってから、ワシの注文を聞く。
どうやって稼いだか知らんがおっさんのコインは値打ちあるなあ、
とワシは値うちの薄い1万円札を出し、
多少ベタついた百円玉含みのお釣りをもらった。
何だか嬉しかった。
もう五年も前なのか。
おっさんの顔や服装は覚えてないけど
コインの山と、垢に縁取られた爪は覚えてる。
(20190327記)
このときのコメント欄、盛り上がったのが、嬉しかったです。
(20240327記)