「描かずにはいられない」から芸術は生まれる。BBBムービー美術系映画その②「かいじゅう」。
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これこそがアートなんやと思った。
すごい熱量で、絵を描き続ける。
結果的に数々の賞を受賞してるけれど、
そんなことのために彼は絵を描いてるのでは全然ない。
文章からは、すごく知性を感じるし、
彼の抱える大きな痛みが伝わるし、
見つめている深淵が見えてくるけど、
彼の主戦場は、文章ではない。
「絵」、なのだ。

もしかしたら、彼にとっては、ワシらと共有してるこの世界より、
絵に何かをぶつけているその瞬間や、
絵の中の世界こそが現実なのかもしれない。
なんとなく、そんなことを思いながら、
映画を観てると、妹さんの言葉が、
真芯を捉えていた。
「病気を治すために生きるのじゃなく、絵を描くために生きている」
心の病を抱えて、ずっとその中で、
苦しみながら生きてるのかもしれないけど、
家族にここまで理解されて、愛されて、
甥っ子や姪っ子から「かいじゅう」と呼ばれ、慕われて、
そのことを嬉しく思っていて、
彼を自由にさせてくれるお母さんがそばにいて、
もしかしたら誰よりも彼を理解してるのかもしれない、
猫のちくらが彼を見守っている。
ある意味、すごく恵まれた環境ではあるけれど、
その中でも、彼は絵にすべてをぶつけないと生きてられないのかもしれない。
だから、もちろん、そのぶつける絵に、
一切の打算も妥協もない。
彼にとっても、彼の絵がどこに行くのかはわからないのかもしれない。
こんな純粋なアートが他にあるだろうか。
だからこそ、彼は絵に自分をぶつけながら
「どこまで行っても絵が追いかけてくる」と呟く。
すべてをぶつけてないと、出てこない言葉だと思う。
観てるうちに「アーティストのドキュメンタリー」と言うより、
もがきながらもなんとか生きようとする一人の人間のドキュメンタリー、
という気がして来た。
もちろん、彼が絵を描かなければ、注目されることもなく、
映画になることもなかったんだろうけど、
掘れば掘るほど、この映画は、「アート」ということに捉われなければ、
ワシ含め、誰もがやってる、生きるためにもがく行為を、
一人の人間に丹念に密着してひとつの形にした、
映画なのだという気がして来たのだ。
だから、この映画は、まったく絵心のないワシにも、
同じようにもがきながら生きてる人間として、
ズシンと響いてくるのかもしれない。
まず、この西村一成さんの作品を生で観てみたいと思った。
監督さんは、ワシが毎週欠かさず観てる番組「no art, no life」の監督もされてて、
映画「日日芸術」や、テレビ番組「人知れず 表現し続ける者たち」の監督もされた
伊勢朋矢さんなので、信頼しながら、この映画を観られた。

