何人も、モレッティ。BBBムービー「チネチッタで会いましょう」。
劇中劇の演出家としてのモレッティ、
この映画の主役を演ずるモレッティ、
この映画の監督するモレッティ、
何にものナンニ・モレッティが感じられて、
頭の中がごちゃごちゃになった。
前作「3つの鍵」のシリアスで暗い世界とは、
正反対の、コミカルで楽しい世界だけど、
人はそれぞれ自分の尺度でしか世界を見られなくて、
すぐ近くの人でも、心の中がどうなってるかは、
完全には理解できるものではない、という点では共通してる気もした。
しかし、このモレッティの演じる映画監督のジョヴァンニ、
ほんとズレまくってる。
よくこの年まで、このズレに気づくことなく過ごせたなあ、
と思うほど。
まあ、そのズレから起きるシーンの数々が、
この映画の面白さにもなっているので、ワシ的には構わんのだが、
「うざ!」と思う人がいても、間違いではなかろう。
そのユーモアのセンスも、さすがにモレッティ、
ところどころに挟まるミュージカルのようなシーン、
別にモレッティが、ミュージカルを作ろうとしたわけではなく、
揶揄のような意味合いもあるんだと思うのだが、
その「揶揄」が、モレッティ自身のものなのか、
映画の主役としてのものなのか、
果たして本当に揶揄なのか、
モレッティにも「実はこんなんも作りたかったのよね、恥ずかしいけど」
という気持ちの表れたものなのか、
とか考え始めると、
どんどん、わからなくなっていって、
「まあわからないままでええか」と思って、
いろいろ考えることなく、楽しむしかない、
って気持ちになったのであった。
そのわからないの最終地点なのか、
結局、ストーリーまで、最後どうなったのか、
よくわからないまま、終わってしまった。
それが目的やったら、モレッティにまんまとやられてしまったなあ、
と思ったのであった。