子どもの衝動を形にすることができる相米慎二さん。BBBムービー「お引越し」「夏の庭」。
相米慎二監督の作品がふたつまとめて4Kリマスターされたので、
両方観てきた。
ふたつとも良かった!
なんでもないような、何気ないシーンにドキドキしたり、泣きそうになったり。
それは、今思うと、どうってことないことに、
子どもの頃、すごく揺さぶられたことに繋がってるのかもしれない。
相米さんは、子どもの頃に感じた、その感じ方をしっかり覚えてて、
そのまま映画として再現する能力が、人並みはずれて凄いのかもしれない。
どっちの映画観た時も、ずっと忘れていたけど、
脳みそのどっかには、そのまま保存されてた子どもの頃の、
喜びや悲しみを、発掘されたような気持ちになった。
そして、両方の映画にある、幻想的なシーンの素晴らしさ!
ほんま、小説や歌とも違う、映画ならではの醍醐味。
相米さんが「映画」という表現手段をとった意味が、
すごく感じられた。
しかもそれが、映画的なビジュアルの面白さを追求するだけではなく、
ちゃんとテーマに落ちていって、
テーマが心に残る構成になってるのが、素晴らしいと思った。
観終わった後、切ないのに、
何かを達成したかのような充実感があるのは、
この構成のおかげかもしれんな、思った。
少しだけ、個々の感想を。
まずは「お引越し」。
中井貴一さんの関西弁にやや不安はあるけど、
それぞれのキャラクターが立ってて、魅力的。
お母さん役、「見たことあるけど誰やったろう」思いながら観てたら、
桜田淳子さんやったんや!
歌手のイメージしかなかったので、
こんなに演技が上手いんや、と驚いた。
そして田畑智子さんは「子役」と言うのが憚れるほど、
素晴らしい演技やと思いました。
強がりながらも、やっぱり両親が好きで、恋しくて、
一緒に暮らしたい主人公。
二人を愛してるけど、一緒に暮らすことには苦痛を感じてしまうお父さん。
ちょっと前に観た「パリ、テキサス」とすごく重なってきました。
そして、主人公の少女が、父と母を「親」としてだけではなく、
一人の人間として見られた時、
少女は、少し大人になる。
その姿は、すごく凛々しく思えた。
もしかしたら、ワシは、まだこの少女のエンディングの心境にすら、
達してないのかもしれない、思ってしまいました。
そして「夏の庭」。
3人の少年が、本当に生き生きとしてる。
それぞれに小さな葛藤を抱えながらも、
懸命にもがいて、生きている。
この3人が揃ったら、ほんまに楽しいんやろうなあ。
ワシはどの少年にも似てなかったと思うんやけど、
この3人のそれぞれにワシのかけらが紛れ込んでるような気がした。
なので、3人の気持ちは、それぞれに痛いほど、食い込んできた。
そこに入り込んでくるおじいさんの物語。
まだ戦争の記憶が生々しいこの時代だからこその物語であり、
少年たちには想像もできなかった時代の記憶が、
少年たちを変えて行く。
簡単に言ってみれば、少年たちの成長譚なんやけど、
こんなに瑞々しく、リアリティを持って描かれると、
近い時代に少年時代を過ごしたワシの気持ちがわさわさするのは、
仕方ないことなのだろう。
ワシの下の世代や、今の少年たちが、
この映画を観て、どんな気持ちになるのか、
ちょっと知りたいと思った。