明兆作「大涅槃図」公開@東福寺法堂。

吉山明兆という室町時代の禅宗のお坊さんがいる。
僧としての出世を周りから嘱望されたが、
絵が好きすぎて、出世を拒否。
生涯絵を描き続け、その絵は後世に大きな影響を与えた。

絵も、生涯も興味がある人で、
代表作の大涅槃図をいつか観たいと思ってた。
その大涅槃図が2年の修理を終わり、
東京で開催中の東福寺展に合わせて、
東福寺で公開中と聞いて、
早速行ってきた。

さすが紅葉の名所、東福寺。
この季節は、青紅葉が、美しい。
生き生きしてるのだが、繊細さも併せ持つ。
ええ季節に来たな。

立派な三門の向こうにある法堂に、大涅槃図はあるらしい。
この三門、扁額は足利義持の直筆で、畳三畳分もあるらしい。

さあ、法堂に入ろう。
外からは二層に見えるが、中は一層、
むちゃくちゃ天井が高い。
天井には堂本印象さんの龍図。
なんか正しい禅宗寺院やなあ。

そして、正面に、憧れの明兆作、大涅槃図。

※写真は拾い。                        

寝転がってるお釈迦さんが1メートル80センチあるそう。
明兆は、この大きさにこだわったらしい。
観る人が、本当のお釈迦さんの涅槃を観てる気持ちになれるように。

少し待つと、お坊さんが説明を始めてくれた。
明兆の人柄、絵に賭ける気持ち、
やはり好きやなあ。

おもろかったのは、この涅槃図には猫も描かれてるという話。
普通、涅槃図には猫は描かないけど、これには描かれてる、というのは知ってて、
お坊さんの説明の前に、既に猫は見つけてた。
絵の下の方、少し左手、象の足元に蹲っていた。

※この写真も拾い。                

けど、その理由は知らなかった。
お坊さんによると、
お釈迦さんのお使いの鼠が、涅槃に入るお釈迦さんのために、
薬を運んでたのだが、その鼠を猫が、ちょっかい出して、
お釈迦さんが涅槃に入る前に届けられなくなったので、
猫は涅槃図には描かれないのが通例だった。

けど、明兆が、この図を描いてる時、
毎日のように同じ猫が、現れて、明兆を見守ってて、
ときには、必要な顔料を野か山か、どこからか探し出し、
咥えて持ってきてくれたりしたらしい。
それで、明兆さん「お前も描いてやろう」と、
掟破りの猫入り涅槃図を描いてしまったという話。

なんだか嬉しい気がするなあ。

お坊さんの話のあとも、ぼんやりこの図を観上げてて、
1時間近く、法堂の中にいただろうか。

東福寺には、ワシの好きな作庭家、重森三玲さんの最高傑作とも言われる
市松模様の庭があるのだが、
この日は、この涅槃図の印象を大事にしたいと思って、
そこには寄らずに東福寺を出た。

駅までの道も、気持ちいい。
青紅葉の埋まった通天橋もいい。
ほんまに寒くもなく、暑すぎず、
新緑が初夏の香りを運んでくる。

ええ季節のええお天気の日に、
念願の絵を観られて、
ええ気分で、東福寺の駅前で、
鮪の中落ち丼を頂く。
めっちゃ美味かった。

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