CD「ぜいご」鈴木常吉。

       ※Facebookのバトンで回ってきたときに書いたものを加筆修正しました。

このアルバムを初めて聴いたときの涙の流れる感じは忘れない。
生きてゆくことの哀しさ、憐れさ、
だけど、だからこその美しさ、
いろんなことに納得が入って、
生まれて初めて「このアルバムを棺桶に入れてほしい」と思った。

鈴木常吉さんを知ったのは、その数年前だ。
高田渡さん監修の、詩人山之口貘さんへの
トリビュートアルバム「貘」で、つれれこ社中という
変わった名前のグループにめっちゃ惹きつけられ、
いろいろ調べて、そのメンバーの鈴木常吉さんに辿り着いた。
その頃、ワシは転勤先の福岡にいて、
鈴木さんもソロ音源を発売されておらず、
今のように全国ツアーなどされてなかったので、
お会いしたこともないまま、
鈴木さんのホームページの掲示板で、
やり取りするくらいだった。
二人とも、そんなにマメではないようで、
その掲示板、ワシが書きこむと1カ月あとに、
鈴木さんが書き込む、
それにワシが一カ月後に気付き、書き込む。
他には誰も書きこまない。
と、誰も見ていない公開交換日記のような状態がしばらく続いた。

そして、ワシが大阪に戻り、しばらくした頃、
満を持して発表されたのが、このアルバムだ。
サポートには、関島岳郎さんと中尾勘二さん、
大工哲弘さんのサポートなどで、ワシがよく知ってるお二人。
ライナーノーツには三上寛さん。
その文章も素晴らしい。
もうどこをとっても、ワシには非の打ちどころのないアルバムだった。
このアルバムの素晴らしさを分かってくれそうな人に
いろいろ宣伝して回った。
そういう人へのプレゼントも、このアルバムにした。
そんな人の中に、ワシの同僚のアートディレクターがいて、
そのアートディレクターが知り合いの漫画家に
「安倍さんの漫画に合いそうな音楽ありますよ」と
紹介したくれたことが縁で
テレビドラマや映画の「深夜食堂」に、このアルバム収録の
「思ひで」が使われるようになった。
少しは、鈴木さんの役に立てたかな。

鈴木さんが自分のレーベル「しゃぼん玉レコード」を立ち上げて、
このアルバムをしゃぼん玉レコードから再発売することになったとき、
アルバムの帯も書かせて頂いた。
※見にくいですが、写真にはワシの書いた帯も写ってます。

実は、鈴木さんの音との出会いは、もっと前で、
鈴木さんがイカ天で活躍した「セメントミキサーズ」の
リードボーカルだった、と知ったのは、いつだったろうか。
イカ天は関西ではオンエアしてなかったのだが、
ワシはその頃、ブレイブ・コンボが大好きだったので、
「カール・フィンチが日本のバンドをプロデュースした」と聞いて、
気になって、そのアルバムを買って、
その面白さに夢中になった時期があったのだ。

そのバンドのリードバーカルが鈴木さんだと気付いたときは、なかなか見つからなかった
パズルの最後のワンピースを見つけたような気分になった。
あの頃の曲、「東京らっしゃい」とか「ヒ・メ・ジ」とかも
またライブで聴いてみたいな。

その後もいろいろあったけど、鈴木常吉さんは
アルバムもライブも、ずっと聴き続けてるミュージシャンだ。
「俺はレトロなんかじゃねーよ!ただ古臭いだけなんだよ!」
「若い奴で俺より長生きしてるやつなんかいないよ!」とか
名言が聴けるのも嬉しい。

ずっと聴き続けて行くと断言できる、ワシにとっての文句なしの名盤だ。

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