この曲を創らせるために、神様がラヴェルに、いろんな経験を課したのかもしれない。BBBムービー「ボレロ 永遠の旋律」。
もちろんこの曲のことは、よく知ってるし、好きな曲でもある。
しかし、その作者のラヴェルのことを、ちゃんと知らなかったなあ、
と、この映画を観て思った。
印象的なたった二つの旋律で構成されながら、
あれほどの高揚感をもたらす曲、
クラシックはもちろん、すべてのジャンルでも、
こんな曲、他にあまりない気がする。
唯一無二の曲やなあ、と思う。
その誕生の秘密や、誕生してから、この曲そのものが、
ラヴェルにのしかかり、飲み込んでいくような状況を、
丹念に描いた映画だと思う。
面白かったのは、映画を観てると、この曲が、ある日突然生まれたのではなく、
料理のレシピを見るように、ラヴェルの経験の中で、
この曲に繋がるいろんな要素が、
少しずつ、集まっていくのがわかる気がしたことだ。
まるで、神様が、ラヴェルにこの曲を作らせるために、
辛いことも含め、いろんな経験をさせてるかのようだ。
やはり、あらゆる優れた創作は、ある日突然、頭の上に降ってくるのではなく、
その人のあらゆる経験が、あるタイミングで、
自分でもその時期をコントロールできない、
昇華を迎えて、産まれるものなのだなあ、と思った。
それを産み出したラヴェル自身が、曲が出来上がってから、
頭の中で、この曲に取り憑かれるのもよくわかる。
ワシも、一度、この曲聴くと、しばらくは頭の中に繰り返し繰り返し、
響いてくるもんなあ。
もちろん、この映画もラヴェルの人生を忠実に描いたもの、
というより、それをモチーフにした創作なのだろうが、
この映画全体のリズムが、時間や苦悩を行ったり来たり、
「ボレロ」のリズムと同期してるようで、
「ああ、計算され尽くした映画やなあ」と感心してしまった。
母、結婚はしなかったけどずっと寄り添ってくれる最愛の人、
ラヴェルに曲を依頼するダンサー、マネージャー、家政婦さん、
ラヴェルを取り巻く女性たちが、
それぞれ自分の役割を心得てるかのように、
ラベルを「ボレロ」に導いていく。
「この人は恵まれた人やなあ」と少し、嫉妬してしまった(笑)
けど、晩年の病気のことは知らんかったなあ。
後から考えると、その病気の兆候みたいなものも、
ちゃんとストーリーの中に埋め込まれてて、
ほんまにようできた映画やなあ、と思いました。
けっこう気に入ったのは、オープニングシーン。
クラシックはもちろん、ジャズやアフリカンな音楽、
いろんな形で、「ボレロ」がカバーされてて、
この曲の影響力の凄さ、
どんな音楽にも馴染んでしまう普遍性を
気持ちよく見せつけられました。
タイトルからして、「ボレロ」がこの映画の真ん中にいるんだけど、
要所要所で使われるラヴェルの他の曲も、素晴らしくて、
映画のストーリーにピッタリハマっておりました。