写真集「幻植物園」桑本正士。

家に帰ると、本が届いていた。
「幻植物園」という写真集。
2016年に亡くなった桑本正士さんの遺志を
お友だちが形にされた私家版の写真集だ。

素晴らしかった。桑本さんらしくて、
嬉しいのに、桑本さん思い出して、涙が出そうになった。

桑本さんは音楽写真家として有名で、
ワシは桑本さんの撮った登川誠仁さんの写真に衝撃を受けた。
他にも国内なら、細野晴臣さん、忌野清志郎さん、高田渡さん、
はちみつぱい、ムーンライダーズ、大瀧詠一さん、友部正人さんなど、
一癖も二癖もあるミュージシャンから時には指名で、
写真を撮られていた。
沖縄にも顔が広く、登川さんの他、嘉手苅林昌さん、大工哲弘さんも撮られている。

活動は、国内に留まらず、セルジュ・ゲーンズブール、
ジェーン・バーキンの元夫婦、カート・コバーンや
フランク・ザッパなど、やはり癖のある人々の写真を撮られている。

その一方、お金には無頓着で、一度断りきれずに
氷室京介さんの写真集を撮ったらしいが、
それを観た他の大物ミュージシャンに撮影を頼まれても、
全く興味を示されなかったそうである。
そういうところも憧れるなあ。

ワシが桑本さんと接したのは、鈴木常吉さんを通じてだった。
一時、鈴木常吉さんと上野茂都さんと桑畑繭太郎名義で、
「つれれこ社中」というバンドを組んでおられ、
鈴木さんとは親交が深かったそうだ。

動画でタンバリンのような物(沖縄のパーランクー?)を
叩いてるのが桑畑繭太郎さん。
アコーディオンが鈴木さん、三味線が上野さん。

一度、鈴木さんが写真を撮って欲しいと関西ツアーに
桑本さんを連れていらっしゃったことがあった。
今はなきブルーモンクで、鈴木常吉さんと良元優作さんの対バン、
鈴木さんを撮りに来たのに、良元優作さんも
熱心に撮られていた姿が印象的だった。
「面白いねえ!表情がどんどん変わるんだよ!」とおっしゃってた。
大物ミュージシャンに興味示さなかった桑本さんが、
優作さんを夢中になって撮ってたというのは、なんか嬉しい話やな。

その日、鈴木さんと桑本さんがうちに泊まってくださった。
次の日の朝、「お見合い写真撮っておこう!」と
うちのベランダで撮った写真を、「幻植物園」と並べてみた。
その頃、桑本さんは、遅まきながらデジタルカメラに
挑戦してたらしく、デジタルで撮って頂いた。
(ライブは慣れたアナログカメラで撮っていらっしゃった。)
後日、鈴木常吉さんがフォトフレームに入れて、プレゼントとして
郵送してくださった。
鈴木さんの手紙にはひとこと「桑本さん、デジタルは苦手なようです。」と
添えてあった(笑)

桑本さんの唯一の動画作品は、やはり鈴木常吉さんの「浮かぶ海峡」だ。
それの撮影では、東京、台湾、韓国、沖縄を廻られたと記憶してるが、
そのツアーの途中、宮古島で合流させて頂いた。
昼から飲んでいた我々は、ライブ前、少し酔いを覚まそうと、
会場近くの宮古港に散歩に行った。
当時、尖閣諸島の緊張が高まっていて、
港には海上保安庁の巡視船が止まっていたのを記憶している。
その近くに座り込み、港を泳ぐえいの影や、
彼方に夢の国のように浮かぶ伊良部島の灯りを、
飽かずに鈴木さんと眺めていた。
その時、知らん間に桑本さんが撮ってくれた写真は、
ワシのお気に入りの一枚になった。

幻植物園、いい思い出まで甦らせてくれた。
桑本さん、本当にありがとうございました。

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