久しぶりの大阪府脱出、行き先は八瀬 瑠璃光院。

明日、他都道府県への移動自粛要請が解除されると聞いて、
天邪鬼なワシは、「だったら今日中に他都道府県へ行ってやる」と
雨降りにも関わらず、三ヶ月ぶりに京阪特急に乗って、
京都へ向かった。
あとふたつ理由があるのだが、それは、おいおい説明します。
京阪特急、結構混んでたので、こういう時は怖がりの本領発揮してええか、
と、500円出して、がら空きの有料指定席へ。
うむ。
天下取った気分。

車窓から見える景色、雨だけど、なんだか見とれてしまう。
ああ、三ヶ月も外に出なかったんやなあ。
基本的に引きこもり体質なので、
家におるのは、なんら苦ではないが、
やはり外に出ると、家では感じられないワクワクした気持ちになる。

出町柳に着いて、河合橋を見ると「ああ、京都に足を下ろした」という気持ちが湧いて、
なんだか胸が熱くなったのに驚いた。
あ、ワシ、こんなに京都来たがってたのか。
そう言えば、家でわりと京都と沖縄と福岡のニュースや映像見てたのは、
やっぱ行きたくても、今は行けない、って気持ちがあったんやろな、と思った。

しかし、今日の目的地はここではない。
叡電に乗って、もう少し遠くまで行く。
運良く「比叡」が来た。
久々の遠出を祝福してくれてるって勝手に意味を付ける。

終点の八瀬比叡口で降りる。
この駅に来るのは、10年ぶりくらい。
前回は福岡の手島さんと来た。
ワシは真っ赤な花柄のアロハ を来てたのだが、
ムームーかなんかと見間違ったのか。
ぬれ煎餅屋のおばちゃんに夫婦と間違えられた。

雨かあ、と残念がっていたが、生き生きとした新緑を見て、
「雨で正解かも」と思ったりもする。
まあ、ビーサン履いてきたのは、間違いなく不正解なのだが。

目的地は瑠璃光院
今は、青紅葉の特別拝観時期なのだ。
数年前行こうと思ったが「すごい人で行列で観る」、
と聞き「庭をそんな風に忙しなく観るのは嫌だな」と諦めていたのだが、
数日前行った友だちがSNSで「今は空いてる」と言ってたので、
なるほど、そうか!せっかくのチャンス!と出かけたのだった。
これが、ふたつ目の理由。もうひとつは、野暮になるから言わないけど、
三つ理由が重なって、「このタイミング」しかない今日、出かけたのだった。

ちょっとした石段を上がり、玄関口に入るとさらに二階に上がるのが順路だった。

階段登った正面、緑が美しい。
見えてる山は大原方面だろうか。
最近大原に住むイギリス人、ペニシア・スタンリー・スミスさんの番組を
何回か見たので、大原もちょっとそそる場所ではある。
しかし、今日は新緑だ。
と、反対方向を観る、、

なんちゅう緑や。
緑の洪水や。
開口部の大きな窓から雪崩れ込む緑。
それが、手前に置かれた大きな机に映って、
圧倒的な緑の世界になっている。

直接観る緑も美しいが、窓枠に切り取られた緑は、さらに美しく感じる。
なぜなんやろう。
企みのない自然が、切り取られることによって、アートに昇華しているような気はする。
ただ、それだけではない、なんかもっと違う理由で、人の琴線に触れてるような気もする。
それが、何かは分からないが、京都的な、日本的な、美意識の秘密が、
その辺にありそうな気だけは、確実に、する。

ただし、一応言っておくが、なぜか、この映り込み、自分の目で見るより、
スマホであろうとカメラ通した方が、より鮮やかなのである。
その理由も、いまいち分からない。
詳しい人がいたら教えて欲しい。
それが面白くて、スマホを、いろんな位置に置いて撮りまくってしまった。
少し動かすだけで、全然違って観えるのが、ほんと楽しい。

一階に降りる階段の前にあるのは写経コーナー。
普段ならやり過ごすところだが、
ここの入場料は二千円也。ちょっとお高い。
この写経用の紙とボールペンと、あと写経しながら飲むためか、
ペットボトルのお茶が料金に含まれてるのだ。
信仰心からではなく、関西人の貧乏性が染み付いてるワシは
生まれて初めての写経をしてみる。
「生まれて初めての写経がボールペンかよ」と思わないではないが、
まあ、ボールペンで、お手本をなぞるだけなので、
ワシにもできたのだから、良しと致しましょう。

一階に下りると釜風呂があった。
古代日本式のサウナみたいなものだろう。
かつて、壬申の乱のとき、背中に矢傷を受けた大海人皇子(諡号、天武天皇)が、
この地で釜風呂に入り、傷を癒したらしい。
「矢背」が八瀬の語源という説もあるようだ。
この釜風呂、実際に使えるのだろうか、
きちんと手入れはされてるようだが。

1階の畳敷きの間からは、また違った緑が楽しめる。
地面には鮮やかな苔。
ここでも、しばらく座りこんで、庭を眺めていた。
良かった!この機会で。
ここに人が並んで、立ち止まり禁止で順番に観なきゃいけなかったり、
視界のほとんどが人で埋められたりしてたら、
ワシは、この庭を好きになることはなかっただろう。
どうも、いろんなところで、人とペースが違うらしいので、
こういうところを自分のペースで観られなかったら、
行く価値がない場所、と思ってしまってたかもしれない。

廊下を渡り、階段を降り、
「喜鶴亭」という茶庵に移動する。
その途中に観る風景も、それだけで人が呼べそうな美しさだ。

喜鶴亭もまた、庭が美しいのだが、ここは廊下がピカピカで、床板への映り込みが、
机への映り込みとまた違う感じがしておもしろい。
やっぱり肉眼より、カメラ通しの方がよく映るので、スマホを畳に置いて、飽きずに撮る。
もっといてたかったのだが、賑やかな、おばさま団体さん(多少控えめな言い方)が
やって来て、ガイドさんの説明が始まって長くなりそうだったので、
退散することにした。

出口玄関を出ると、あら不思議、山門のところに戻っていた。
そうか最初登った階段の分を、建物の中、移動しながら降りて来ていたのか。
よくできた作りやな。
来た道と同じ道を帰ったが、行きと帰りでは、景色が違ってて、やはり面白い。
八瀬驛の駅舎もなかなか味がある。(現在の駅名は「八瀬比叡口」駅なのだが)

駅前の商店のアルバイト募集、そそられるが、ワシはまだ20歳以上、若すぎる。(既報)

帰りの電車も比叡や!
こてっちゃんの血が騒ぐ。
人が少なかったので、近づいてくる様子を
パラパラ漫画が作れるのではないか、と思うくらい何枚も撮る。

さてと、まだ時間は早いな。
叡電→203番の市バス→京都市地下鉄烏丸線と乗り継ぎ、二条烏丸の松榮堂薫習館へ。
ここは、お香の老舗、松榮堂が作ったちょっとした香りのテーマパーク。

頭突っ込んで、香りに包まれるボックスや、自分でシュコシュコしながら試す
匂いのアトラクションが楽しい。
「やっぱり沈香の香り、好きやなあ」と思ったけど、数日前からい草の香りに取り憑かれてるワシは、
沈香を買って帰ろうとまでは思えなかった。
隣にある松榮堂さんで思い切って「い草の香りはありませんか?」と聞いてしまったが、
店員さん、すごく戸惑った顔をしてはった。
たぶん、そんな鄙びた香りは、香道的には埒外なのだろう。
すんませんでした!

さあ、この時点で時刻は3時過ぎ。腹が減って来た。
八瀬で何か食おうと思ってたのだが、八瀬には、食い物屋見当たらず、
出町柳で食おうとしたが、すぐにバスが来てしまったので、
この時間まで食わずじまい。

二条烏丸には、友達に教えてもらった鶏の老舗もあったが、
昼営業、夜営業のちょうど間の時間、開いてるわけもない。
あれこれ探しながら歩くが、何も見当たらない。
ちょっと目星を付けてた地ビールの店も4時から。
そこまで我慢できないほどの空腹。
見つかるのは、すき家に、松屋。
三ヶ月ぶりの京都でそれはないやろう。
見つからぬまま、御池通りを渡り、「なんかあるやろう」と新風館に入るが、
ダメや、生理的にダメや。シャラくさくて入る気になれない。

通り抜けて、三条通りに出る。
は!ここは三条通りか。
よし、久しぶりにイノダに行こう。
頭の中にあの歌が流れ始める。
そのために、どこにも入らなかったのだな、ワシ。
と、自分に言い訳する。

めでたくBLTサンドにありつく。
ああ、美味しい。ああ、落ち着く。久しぶりのイノダや。
本店もすぐ近くにあるのだが、ワシはこの丸いカウンターが好きなので、
結局、こっちの三条支店に来ることが多い気がする。

ようやく、腹も落ち着いた。
三条通を東に向かう。
寺町で、「鳩居堂」にも、い草の香りがないか、
確かめに行くワシは、少し、しつこい。
鳩居堂、向かいに引っ越しててびっくりしたが、
やっぱり、い草の香りはなかった。
じゃあ、そういうものだと諦めよう。
無駄足になったかと思ったが、ちょっと下がったとこの漬物屋で、
うまそうな金目鯛の西京漬焼きが売ってたので、
それと好物のすぐきの漬物も買って、どうだ!無駄足ではなかったのだ!
と、自分を納得させた。
なんか、自分に言い訳ばかりしてるな、ワシ。

まだ5時過ぎ。「きみや」に寄ることも考えたが、
久しぶりに街に出て、1日目から張り切りすぎるのも何だし、
ラッシュ始まってから帰るのも、ちょっと嫌だったので、
まっすぐ三条京阪に向かう。

また指定席で帰る気満々だったのに、
普通車両の特急が来たのが少し残念。

しかし、久しぶりの京都は、やっぱり楽しかった。
家にずっといても、なんのストレスもないのだが、
家から出ると、やっぱり家の中にはない面白いことがあるのだなあ。

と、また出歩く生活の始まりそうな予感がしてくる
いいリハビリ町歩きであった。

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