山口晃「ヘンな日本美術史」。

山口晃の「ヘンな日本美術史」読了。
読みやすくて、おもろかった〜〜。

門外漢にもわかる平易な言葉で、
鳥獣戯画も雪舟も伊勢物語絵巻も
バッサバッサ切りまくる。
しかし、そこには絵描きならではの視点と、
今まで残って来た絵への尊敬があるから、
悪口に堕さない。下品にならない。
しかも、平熱でユーモアのある文章だから楽しく読める。
ホンマにこんなおもろい美術関係の本は今まで読んだことがない。

そして、美術も文化だから、日本人のモノの見方や考え方、
空間の捉え方などが現れて、民族論としても、
今までにない一流のものになっていると思う。

「なるほどな〜」とか「広告や音楽にも言えるな〜」と思ったことが
山ほどあったんだけど、その中の一節を少し長いですが、そのまんま引用。
※「日本美術史なのに、外国の話ですいません。
これが一番印象に残ったというわけではないですが、比較的短く簡潔だったので。

(大作家ブリューゲルとその画風を真似た絵を描いてそれを売って、
一生を過ごした息子について)
「父ブリューゲルは、画面の向こうに見ていた風景、
あるいは自分の脳髄にある景色なりを探して、
その絵のずっと向こうにある本質のようなものに
届かせようとして絵を描いている。
画面に現れたものは、その痕跡でしかない訳です。
息子の方はこの画面をさらに写しているのですから、
元の画面以上に深まることができません。
つまり、描いている人間の意識の持ち方で、
絵の深みと云うのは決まってくるのです。」

この本には、こんなうなずける話が、ゴロゴロしてる。

音楽でも、自分を誰かに似せようとしてやる人の音楽が薄く感じられて、
自分の中にある風景を描こうとする人のが、面白く感じられるのは、
そういうことなのだろうと思った。

しかし、彼は模倣を否定する訳ではない。
技術や技法を先人から学ぶことも否定しない。
その意義も認めている。
むしろ「ただ新しくあるためだけに」オリジナルを目指す昨今の個性主義や
「変わるためだけに変わる」という変革偏重主義に否定的な視線を投げ掛ける。

大事なのは、いかに自分の中にあるものを読み取って、
それを可視化すること、可聴化することなんじゃないかな、と思った。

時間をおいて、もう一度読んでみたい本だった。

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