酔っ払いin奄美。
「お相撲さん?ねえ、お相撲さんなの?」
奄美市名瀬のバーで、
横に座ったベロベロのオヤジに
繰り返し聞かれた。
3回目までは「ちゃいますよー」と愛想笑い。
4回目に聞かれたときに、
「やかましい」とはねつけた。
怒っていたわけではない。
酔っていたわけでもない。
ピシャリと言わないと、
いつまでもこの問答が続くのが
ありありと見えたからだ。
ワシも名だたる酔っ払い、
それくらいはわかる。
あと、ほんまにお相撲さんだとしても、
4回聞かれたら、めんどくさいだろうな、
と思ったのもある。
果たして、オヤジは静かになった。
成功か。
オヤジに人の道、とは言わないまでも、
会話術の初歩くらいは教えられたのか。
しばらくしてオヤジは、
「酔っ払っててごめんねー」と
バーテンダーに言いながら会計を済ませた。
そして、席を立つ瞬間、
ワシに向かって聞いた。
「お相撲さん?ねえ、お相撲さんなの?」
ワシは、この瞬間、
「ああ、このオヤジのこと、
好きかもしれん」
と思った。