練り込まれたストーリーに感心、したのだが。BBBムービー「水平線」。
※ややネタバレあり。
実際のできごとを丹念に盛り込んで、
いくつもの意味を巧みに重ね合わせて、
練りに練られた脚本で作られたいい映画だと思う。
震災で行方不明の方の遺族の、やり場のない気持ち、
大津波での行方不明者と散骨、
いろいろな出来事が、
ストーリーの上で、登場人物の心の中で、
重なっていく映像には感心した。
そこに通り魔殺人事件も重なる。
加害者家族の苦悩に目を向けるのも素晴らしい。
そこにこのタイトル「水平線」。
すべてが平らになる線。
それは、震災の犠牲者、事件の被害者、そして事件の加害者も含め、
すべての人が亡くなった先では、同じになることを暗示してるようで、
「ほんまに上手いなあ」と感心してしまった。
そして、出演者の演技の的確さ。
いかにもいそうな、酔っ払いで助平だけど、
ずっと心に晴れないものを抱えたお父さん。
若いだけに、母を失い、その遺骨すら見つからないモヤモヤに、
押しつぶされそうな娘。
同じく震災を体験してるので、
この父娘の気持ちが痛いほどわかって見守る周りの人々。
震災を体験してないけど、わかってる、みたいな顔をして、
薄っぺらい正義感を武器に、実際は、自分の功名心を優先させてる記者。
兄の起こした事件で、逃亡者のような生活になり、
困窮するけど、兄を慕う気持ちを抱き続ける弟。
すべての出演者が、
本当に、その人であるかのような、
リアリティを感じる映画だった。
なのに、なぜか、どこか納得できない気持ちがあった。
観終わってから、しばらく考えてて、
「あ!これかも」と思えることがあった。
ワシが観逃しただけなのかもしれないが、
加害者の弟がそこまで散骨にこだわる理由が、
ワシにはわからなかった。
主人公が弟の気持ちを忖度してあげてるのかもしれないが、
あれだけ騒ぎになるなら、
他の埋葬方法を考えてもええのではないか?
せめて、兄の最期の言葉で「どうしても散骨して欲しい」
みたいのがあったりすれば、
もう少し、スッキリしたような気がした。