待つ女たち。映画「千夜、一夜」。

今でも年間八万人いると言われる失踪者、
誰かが失踪する、ということは、誰か待つ人がいる、
ということでもある。
その待つ人に視線を向けた映画が「千夜、一夜」。

自分の意思でいなくなる家出、自殺、
自分の意思ではなく、事件や事故に巻き込まれる。
失踪の原因はいろいろある。
ましてや、この映画の舞台は、たぶん佐渡。
拉致の可能性も出てくる。

待たされる身としては、安否が気になるものの、
一番の辛さは、その失踪の理由がわからない、
ということなのかもしれない。

30年待つ主役の女性「若松登美子」を田中裕子さんが演じている。
その演技は圧巻。
そして現れる新たな待つ女、尾野真千子さん演じる「田村奈美」、
待つ女を待つあまり、短期的にだが失踪する
ダンカンさん演じる「藤倉春男」の、お母さん、
白石加代子さん演じる「藤倉千代」も、また待つ女なのかもしれない。

よく練られた脚本で、文学的な味わいもあるんだけど、
この映画、とにかく辛気臭い。
メインキャスト、誰も一人も笑わなかったんちゃうやろか。
待つ辛さは朧げながら理解できるのだが、
それだけで30年という時間を過ごせるものなのだろうか。
映画のトーンとは合わないのかもしれないけど、
ちょっとだけ、そこに長い時間を生きていく「救い」みたいなものを
感じたい気がした。

どこで見たのか忘れてしまったけど、
「30年待ち続ける愛」みたいなことを書いてるのを見かけた。
「愛?」それが救いになる?違和感があった。
愛だけで30年待ち続けられるのだろうか?
きっと、その間には、いろんな葛藤や迷いがあったはずだと思う。
もしかしたら、いつしか「愛」より「意地」が優先してたかもしれない。
その辺の心の動きがもうちょっと分かりやすく、見えたらなあ、
と少し思ったりした。
ワシに見えてないだけやったのかもしれんけど。

音楽が圧倒的にええなあ、思ったら、
清水靖晃さんやった。
納得。

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