行ったこともない店の閉店に涙する。映画「アザーミュージック」。

※ネタバレ、あります。

音楽好きの、音楽好きによる、音楽好きのための、お店やったんやな。
映画「アザー・ミュージック」を観るだけで、
行ったことないワシも、幸せな幸せな音楽体験をした。

「アザー・ミュージック」は1995年から2016年まで、
ニューヨークのイーストヴィレッジにあったレコード店。
タワレコの真向かいにあって、タワレコには置いてないような
インディーズ系のレコードを置いてたので、この店名になったらしい。
むっちゃええネーミングセンス!

この映画は、閉店に際して、アザーミュージックの経営者、店員、
お客さん、お世話になったミュージシャンたちへのインタビューを
中心に構成されたドキュメンタリー映画。
中には、「アニマルコレクティブ」のように、
店員からミュージシャンになった人もいる。

そして、出てくる人がすべて、音楽を愛し、
それゆえに、この店を愛していたことが伝わってくる、
音楽愛に溢れた映画やった。

こういうお店って、敷居が高くなりそうやけど、
映画観た感じで言うと、そんなことは少しもなくて、
ただ自分がいいと思う音楽を、できるだたくさんの人に聴いてほしい、
という店員としての初期衝動に貫かれた店であると感じた。
もちろん、最初から、どんなジャンルにも精通してる人なんていないので、
店員になって、すぐには、皆さん、すごく勉強するし、
日夜、お客さんの質問に答えられるよう努力してはるんやけど。

「自分がいいと思う音楽を、できるだけたくさんの人に聴いてほしい」
これって、ワシが音楽についての文章書くのと、まったく同じ気持ちなので、
映画の前半では「こんな店が近くにあったら勤めたかった!」と思ってたけど、
物語が進むにつれて、「無理無理!こんな的確にアドバイスできない!
客として、この店に入り浸る方が、絶対いい!」という気持ちに。。

ほんま、この店の関係者の知識と、音楽への情熱には驚かされる。
そこに、経営者だ、店員だ、年長だ、若輩だ、との分け隔てが、
一才なさそうなのも、ええなあ。
経営者は、自分があまり詳しくない分野のことを好きでたまらない
若い奴を重用して、教えを乞う。
だから、この店は、どんどん全ジャンルの
インディーズの聖地になっていったのだろう。
ヘビメタだけは、品揃え、よくないみたいだったけど(笑)
もちろん、人種の壁も、この店の中には、全く感じられなかった。
店員にしろ、客にしろ。
日本人で言うと、坂本慎太郎さん、小山田圭吾さん、馬頭將器さん、
竹村延和さんが映画に登場していた。

しかし、ネットの波は、この店にもやってきてしまう。
真向かいのタワレコが閉店し、ネット販売でなんとか切り抜けようとしてたこの店も、
ダウンロード、ストリーミングの波は避けることができなかった。
配信がメインになってくると、
LPなどのアナログレコードが却って売れるようになった
という話は面白かったけど、
それもCDの売り上げ減少を食い止めるまでにはならなかった。

たくさんのミュージシャンを育ててきたお店でもあるし、
既に大物と言われてたミュージシャンにも愛されたお店だったので、
閉店ライブには、オノ・ヨーコはじめ、すごい人たちが集まっていた。
このライブ、最後はヨ・ラ・テンゴで幕を閉じた。
行ったことない店なのに、閉店が寂しくて、
この店が人々に提供してきたものが愛おしくって、
涙が流れてしゃーなかった。

配信は便利だ。否定するつもりは全くない。
だけど、一人や、多くても数人の仲間内で、
家で配信で音楽を聴いてるだけだと、
こういう「繋がり」から広がっていく音楽に合う確率は、
どんどん下がっていくのだろう。
もちろんSNSなどで、知識としての広がりは確保できるのだろうけど、
直接会って話すことで得られるもの、
同じような音楽を好きな人たちが集まってる場に、行くことで、得られるものとは、
数値化できないところで、大きな違いが出てきそうな気がする。
そして、ワシが音楽に求めてるものって、
そういう数値化できないもの、そのものって気もする。

そういうワシも、考えたら、ここ数年、レコード店には行ってない。
配信は苦手なのでほとんど利用しないが、
音源は、ネットかライブ会場で手に入れるのがほとんどだ。

だからか「ワシにとってのアザーミュージックみたいな場所はどこだろう」と考えると、
ムジカジャポニカや、釜晴れ、拾得、橋の下世界音楽祭などの
ライブをやる場所しか、思いつかない。
やっぱり、ワシは、ライブメインで音楽を聴いていこう、
この映画観て、その気持ちがさらに強くなった。

どんな音楽でも音楽が好きな人なら、感じるところある映画やと思います。
残念ながら、北海道・東北・四国では上映予定はなく、
九州では公開終了してるみたいだけど、
その他の地方では、まだ観られるみたいなので、
是非、お出かけください。

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