エミール・クストリッツァ「アンダーグラウンド」。
『人間はみな自分の見たいものしか見ようとしない。』
と言ったのはカエサルだった。
なぜか、この映画を観て、そんなことを思い出した。
エミール・クストリッツァの最高傑作と言われる映画、
「アンダーグラウンド」。
劇場公開時にも観ていたが、完全版のDVDを観た。
なんと5時間を越える超大作!
一気に観るのは体力続かないので、
何回かに分けて、やっとこさ、観終わった。
いやあ、おもしろい!!
まだユーゴスラビアの紛争が続いてた1995年の映画だが、
もちろん、その状況がストーリーにも反映されているが、
それ抜きにしても、登場人物の漫画的だけどそれ以上に人間的な行動と発言、
気が触れてるのかと思うほどの超速バルカンブラス。
初めて観たときの衝撃は、少しも損なわれなかった。
公開時より遥かに長い分、ストーリーのディテールが見えて、
「そういうことだったのか!」と思うことも多かった。
そしてタイトル。
初めて観たときは文字通り、地下世界という意味での
アンダーグラウンドだと思っていたが、
今回改めて観ると、
それは、この世界、すべてのことを、
それぞれの人間が持ってる、それぞれの世界のことを
言ってるのかもしれない、と思い始めた。
「これが正しい!」「私の思う世界観が唯一無二!」
ワシを含め、みんながそう思って生きてるんだと思うけど、
どうして、それ以外の世界がない、
この世界が正しいと断言できるのだろう。
それは、太陽の光を浴びていない、
地下世界かもしれない。
ナチスの侵攻、ユーゴスラビアの崩壊、泥沼の民族紛争など、
世界を照らす価値観がどんどん変わった、あの地域だからこそ、
生まれた映画じゃないかと思う。
そして、それをガチガチのイデオロギー映画にするのではなく、
これほどのエンターテイメントにしてしまう
エミール・クストリッツァ監督の手腕に
改めて敬服してしまうのであった。