杯四つ。

今日の晩ご飯は、京都五条木屋町から路地を少し上がったところにある
枝魯枝魯ひとしなにお邪魔した。
「第二波発生か?というときに呑気なもんだな」と思われるかもしれませんが、
ただの会食ではなく、ちょっと特別な意味のある食事だったのだ。

ここは、2年前の春、桜満開のときに、同じメンバーで来たお店。

実は、この時「ここに来たい!」と言った福嶋さんが、今月お亡くなりになられたのだ。
この時期だからなのか、本人のご遺志なのかは、お聞きしてないのだが、
お葬式への出席もできなかったので、残った3人で、
福嶋さんを偲ぶ会をしようということになったのだ。

この4人では、ここだけでなく、大阪はもちろん、神戸まで足を伸ばしたり、
いろんな場所で、美味しいものを頂いたが、
やはり一番の思い出が、あの満開の桜を観ながらの食事だったので、
偲ぶお店は、ここしかない、という話になった。
普段なら、祇園祭や夏休みで、とても予約の取れない時期だが、
怪我の功名か、三名の席を鈴木くんが確保してくれた。

まずは、福嶋さんがあの日確か頼まれた梅酒も頼んで、四人で乾杯。
そう言えば、あの日、福嶋さん、道に迷われて、だいぶ遅れてやってきたね、
と、話が始まる。
今日も「ごめ〜〜ん!また迷っちゃった。あら?私の分も頼んでくれてたの?」と
入って来そうな気がして、少し、何かが胸にこみ上げて来た。

あの日は二階席だったけど、今日は一階。
「たぶん、あの桜やね」と言いながら、あの日を偲ぶ。
残念なのは、福嶋さんとワシに桜がよく見える席を後輩二人が譲ってくれたので、
写真が、別所さんと鈴木くんのばかりで、福嶋さんの写真が一枚もないことだ(笑)
「あら〜そんなこと、全然気にしないわよ!」
また福嶋さんがいつものスルッとした口調で、
会話が湿るのをうまくかわしてくれる。

料理は、ほんまどれも美しく、美味しい。
あの日も、一品一品、味に驚き、器に感心しながら食べたなあ。
桜を観ながら「あ〜来てよかった!」と福嶋さんが言ってくれた声が、
また聞こえてきた。
「また来たいわ」って言ってたなあ。
本当に、もう一度一緒に来たかったなあ。
二条川端の赤垣屋にも行こうって言ってたじゃないですか、
「奈良は今はかき氷が有名なのよ、今度連れてってあげる」って言ってたじゃないですか、
奈良少年刑務所も入れるようになったら行くはずでしょ、オープンは再来年ですよ。

実は福嶋さん、正確には覚えてないが、20年くらい前から、乳がんを患いながら、
抗癌剤を飲んで、定年まで勤め上げられた。
同僚が亡くなった時、「癌だったそうですね〜」と言うと、
「あら、あたしも癌なのよ」って、すごくさりげなく言われてびっくりしたものだ。

その後、ワシが癌になった時、実は、すごく支えてもらった。
ステージ1でショック受けてたが、20年来戦い続けてる福嶋さんを見ると、
なんか悩むのがアホらしくなってしまった。
それ以来、病気のことでは、何かと相談にも乗ってもらっていた。
一年ほど前、「私なんか、乳がんから、肺や骨にも転移してるのよ」と、
やっぱりさらりと言われて、びっくりしたが、
あまりにサラッとしていたので、なんとなく
「そうかもしれないけど、福嶋さんは大丈夫なんだろな」と勝手に思っていた。

福嶋さんと最期にお会いしたのは、東大寺二月堂のお水取りの時だった。

終活を着々と進められてた福嶋さんは、
将来、車椅子になった時のことも見越して、
奈良猿沢池近くのご自宅を、平屋に建て直されていた。
新築披露も兼ねて、お水取りのときにお招きいただいたのだ。
亡くなられた後に、人伝に聞いた話だと、
このときは、もう余命を聞かされていたらしい。

そんなことおくびにも出さず、いつも通り、
さっそうと、可愛らしく昔話に花を咲かせていらっしゃった。

東大寺の近くで食事をして、近鉄奈良駅まで帰る帰り道が、
福嶋さんと過ごした最期の時間になった。
4人で近鉄奈良駅まで歩いてたのだが、若い二人が先に行き、
しばし福嶋さんと二人きりのような感じになった。
その時、何を話したか、あまり覚えてないが、
「残された時間を好きに生きなきゃね」という話をした感じは覚えている。

その話をしたのは、奈良女子大学の真前。
塀の向こうに美しい牡鹿がいて、こちらを向いて、寂しそうに鳴いていた。
その時は、全然気づかなかったけど、
今から思うと、あれは、何かを知らせていたのか。
その時、福嶋さんが、どんな顔で、牡鹿を見つめていたのかが思い出せない。
相変わらず、ワシは鈍い。

最期の最期は、近鉄奈良駅。大阪に帰る3人で、道を渡る福嶋さんを見送った。
何度も振り返りながら、横断歩道を渡っていく福嶋さんの姿。
「また来ますね」。
「うん、また来てね」って言ったじゃないですか。

その後も、メッセージのやりとりはしていたので、
まさか、こんなに早く、こんな日が来るとは思わなかった。

福嶋さん、本当にありがとうございました。
今でも、全然信じられないのですが、
今日、追悼の宴をして、3人で福嶋さんの話をしたことで、
ようやく、少し、実感できるようになりました。
福嶋さんを出汁に(すみません!)、すごく楽しい時間を過ごしました。
お店の方にも、福嶋さんの追悼の宴だという話をさせて頂いたら、
お店の方が「こういうお話をお聞きすると『やめられない』と思います。
良いお話をありがとうございます。また来てください」と言ってくださいました。
また、3人で行きますので、福嶋さんも来てくださいね。
あ、福嶋さんが今日残された梅酒は、最後に3人で、美味しく頂きましたよ。
「私の分、飲んだでしょ〜〜!」て、あのかわいらしい表情で、
怒ってくださいね。

では、また。

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