居場所は、国ではなく、人だったのかもしれない。映画「FLEE」。

※ちょっとネタバレ含みます。

大阪で観逃した映画「FLEE」、ええタイミングで京都でやってたので観てきた。
素晴らしい映画だと思った。

監督の古くからの友人、アフガニスタンから亡命してきたゲイのアミンの告白、
という形で映画は進む。
今も紛争の続く地域からの難民で、ゲイが存在しないと名目上言われてて、
そうだと分かれば、本人だけでなく家族までもが迫害に遭いかねない、
アフガニスタン〜ロシアを経由してコペンハーゲンにたどり着いた男の物語。

基本的には、全部実話なのだろう。
アニメーションが主体なのは、彼らの安全のためでもあるんだろうが、
そのアニメーションと、ニュース映像の実写が相まって、
悲惨な物語が、より印象的に心に刻まれる。
実写でやるより、映画としては、より上質なものになっていると感じた。

自分の命さえ、ギリギリ支えられるかどうかのところなのに、
家族にも、打ち明けられないアミン。
心の平穏を保つための手段が何もない。

少しネタバレになるが、ようやく家族に打ち明けられたとき、
彼の兄が連れて行った場所、そのときのひとことで、
今まで溜まってきたモヤモヤがス〜〜っと音を立てて、
引いていくくらい、気持ちよくて、ウルっとしてしまった。
彼の兄が、早くに亡命してて、
十分に、そういうことを受け入れられる態勢ができてて、本当に良かった。


監督の「祖国とは?」という質問にアミンが、
「そこにいることが出来て、よそに行かないで住む場所。一時的でなくずっといられる場所」
と答えるシーンがある。
悲しい言葉だと思った。
本当は、幸せな子ども時代を過ごしたアフガニスタンが、
そうであれば一番良かったのだろうが、
今は、それを求められそうにない。
いつまで待てばいいのか、待てば、その日が来るのかも、わからない。
その中、彼が祖国と思える場所は、
愛する人と平穏に暮らせる場所だった。
そういう意味では、国ではなく、その愛する人のいるところこそ、
彼にとっては、新しい祖国になったのだろう。

途中、印象的なシーンがあった。
命からがら、ロシアから小さな船で逃げ出した難民たちが、
ノルウェーの大型船に出会い「これで助かった!」と思った瞬間、
大型船から聞こえてきた言葉は
「諸君は送還される」。

世界の難民は一億人を超えた。
世界中が難民で溢れている。
きっと日本に来て、入管で非人道的な扱いを受けてる外国人の方々も、
毎日のように彼らと同じ思いをしてるのだろう。
「文句があるなら祖国に帰れ」とは、
どの入管の映画を観ても、必ず出てくるフレーズだ。
それは「やっとそこから抜け出せた」と思ってる人にとっては、
「死ね」よりもきつい言葉かもしれない。

国籍や人種、民族に関わらず、主義主張を超えて、共通の基本的人権を保障しなければ、
世界が立ち行かない時代が、もう既に来ているのだと思う。

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