映画「WANDA」。

いやいや、すごい映画が眠っていたもんだ。
1970年制作の映画「WANDA」が、50年以上の時を経て、公開された。
35ミリ、16ミリのフィルムで撮られたこの映画は、
当時の質感を活かしたまま、今の技術で、再生されているらしい。

ファッションこそ、古さを感じるが、
感覚的には、古臭さは微塵もなく、
この荒れた画像も「狙いなんじゃないか」
もしかしたらこのファッションも狙いで、
2022年に作られたのではないか、
と思うくらい、新鮮な感覚に溢れている。

ほとんど音楽のない静かな画面で、
過激なシーンもあるのに、
物語は淡々とながれて行く印象。

なんか底には、パンクな精神が流れてるような気がする。
ちょっとゴダールを感じたりもする。

途中から、もう「この映画、大好き」と思わずにはいられなかった。
観てる時は意味の分からなかった冒頭のロングショットも、
ある意味あっけない幕切れも、
今や、ワシの大好きポイントになっている。

一番好きなのは、全編通しての彼女の表情。
物憂げで、哀しみを湛えつつ、自分から運命を動かすエネルギーのない、
生気からはかけ離れた表情。
そんな尻を蹴り上げたくなるような表情が、
いつの間にか愛おしくなっている。
なんなんやろ、この感情。
映画を観てて、抱いたことのない感情のような気がする。

主演にして脚本、監督のバーバラ・ローデンは、エリア・カザンの妻で、
この映画で監督デビューして、すぐに亡くなったらしい。
本当に惜しい才能だけど、
この映画を残したってことで、
すごい人生を送った、と言っていい気がした。

そして、この映画は、すごい人たちに激賞されている。
しかも、一筋縄ではいかないすごい人たちに。
どんな人たちかは、ぜひ公式ホームページに行って見て欲しいのだが、
一人だけ挙げると、あのマルグリット・デュラス。
「この映画を公開するためなら何を差し出してもいい」
と言うほど、惚れ込んだらしいです。

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