橋本ヒネモスのBBBムービーvol.32「郊外の鳥たち」「レッド・ロケット」「アダマン号に乗って」「アンドレ・レオン・タリー美学の追求者」。
「郊外の鳥たち」。
ポスターの少年の目の強さが気になって観に行ったのだ。
うーむ。映像は不可思議に美しく、
カメラも物語も、ゆっくりと動くのに、
幻惑されて目眩がしそうな感覚に襲われる。
時制がいつなのか、このシーンとあのシーン、
どちらが先にあったことなのか。
あの少年と、この青年は同一人物なのか。
ものすごく詩的で、文学的な表現で、
きっと評論家の評価は高いんやろうけど、
ワシには寡黙過ぎて、ちょい辛かったです。
寝落ちとの戦いが熾烈でした。
「レッド・ロケット」。
脚本的に荒いとこもある気がするし、やや中だるみの感じもしたけど、
この前に観た「郊外の鳥たち」がけっこう文芸作品で難しかっただけに、
この分かりやすさが、めちゃくちゃ気持ち良かったです。
主人公が気持ちええくらい、ええ加減で薄っぺらくて、
小狡くて、自分なりの正義感すらない最低のダメ人間で、
おもろいんやけど、絶対近くにいて欲しくない。
その周辺の人間が、輪をかけてダメって気もするしな。
考えたら、主要登場人物、いや登場人物、全員ダメな映画かもしれん。
そして、ある意味、誰一人、幸せになったかどうか、わからんのに、
観終わった後、不思議に爽快感のある映画でもありました。
「アダマン号に乗って」。
最初のめっちゃパンクなボーカル聴かせてくれる人のシーンで、ええかも?
と、思ったんだが。
説明なさ過ぎるんよな〜。
前にもフランスのドキュメンタリーで思ったんやけど。
観てたらわかるでしょ、ってことなのかなあ。
中華思想ならぬ中仏思想なのか。
サイトとかに頼るなら、映画として自立してない気がする。
それを差し引いても、ここがあまり魅力的な場所に思えなかった。
いろんな人のインタビュー聞いても、そんなに楽しそうに見えなくて、
この施設ならではの良さが見えてこない気がするし、
この施設が船の上だという良さも、感じられなかった。
もしかしたら、説明がほとんどないからなのかもしれないけど。
ワシには、滋賀のやまなみ工房の方が、
よっぽどみんな楽しそうにしてるし、
施設自体の思想もあるように思えた。
「アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者」。
めちゃくちゃ強い人やなあ、思った。
いや、いろんな葛藤は、もちろん抱えてはったんやけど、
「自分はこっち」「そんなことは関係ない」と思えるエネルギーが尋常じゃない。
南部、アメリカの中でも人種差別のきつい地域に生まれながら、
人種差別、性差別、いろんな差別と闘いながら、
自分を、自分のファッションに対する考えを、貫いた。
見た目もすごいけど、色物的な見方じゃなく、純粋な実力で、
世間に、世界に、自分を認めさせた。
こんな面白い人がいたんやなあ。
ファッションの世界に疎いワシは、
この人のことを全然知らなかった。
この人がモデルになってるという映画「プラダを着た悪魔」も観てないしなあ。
ものすごい巨漢だけど、若い時は、むちゃくちゃスラッとしてて、
スタイルも良くて、モデルと言われても納得しそうなのんには、ビックリした。