不安が恐怖が、無辜の民を黒く染めて行く。BBBムービー「福田村事件」。

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先日、某映画館行ったら満席だった「福田村事件」を、
平日昼間、前の劇場より、ちょっと空いてそうな劇場に観に行った。

史実としても、知りたかった作品だった。
さすが、森達也さん、ドキュメンタリー映画の延長線上、
という感じのドラマに仕上がってた。
ややドラマ的誇張で「いらんのんちゃうかな」と思う部分もあったが、
それはワシの観方が史実を一番期待してたからで、
映画を観やすくするには、必要な演出だったかもしれんと思う。

2時間を超える映画って、ワシ、集中力や尿意、眠気など、
さまざまな方向から不安を感じてしまうのだが、
気がつけば、エンドロールになるくらい、
時間を感じさせない、観入ってしまう映画だった。
まあ、終わった瞬間、小走りでトイレには行ったが。

映画は、ほんまにようできてた。
伏線とかのテクニックも見事だし、
ひとつひとつ積み重ね、
納得しながら観ていけるストーリーの完成度も素晴らしい。
鈴木慶一さんの音楽も、ある意味鈴木慶一さんぽくないが、
効果的に映画のおどろおどろしさを盛り上げていた。

やはり恐ろしかったのは、
福田村の普通の人々が、
恐怖や不安から、「正義」と信じ、
朝鮮人と思った人々を惨殺してしまうに至る
集団パニックとも言える心理状態。
ああいう非常時には、人間は、
なんか仮想敵みたいなものを必要とするものなのだろうか。
福田村の人々が恐ろしいのではなく、
そうなってしまう人間そのものが恐ろしい。
それは、きっと今でも大きくは変わってない気がする。
世界中のすべての戦争も、極言すれば、
この心理から起こっているのではないか。
人間が次の段階に進化していくために、
意識的に克服しなければならない課題なのではないか、
と思った。

実際、殺されたのは朝鮮人ではなかったが、
「朝鮮人なら殺してもいい」「殺さなければならない」
と福田村の人々に信じさせたのは、
政府であり、警察であり、マスコミでもあった。
戦争も同じだと思うけど、こういう非常時には、
人間は、そういう扇動によって、
わかりやすい仮想敵に向かっていってしまう。
御用マスコミしかいない世界が恐ろしいのは、
官民一体となって、迷うことなく、
そっちの方向に民衆をミスリードしてしまうことだろう。

好き嫌い関係なく、
外国での戦争が生活を脅かしている今こそ、
観るべき映画だと思った。

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