映画「春画と日本人」。

※ネタバレあります。

春画と日本人」というドキュメンタリー映画を観てきた。
かなりおもろかった。
江戸期〜明治期にかけての浮世絵師は、ほとんど春画を描いてるし、
映画の中で春画の再現を試みることで、
途方もない技術が使われてることも分かる。

西洋では、古くから春画の芸術品としての
素晴らしさが認められていて、
大英博物館で春画展が行われ、大盛況だったのに、
その巡回展を日本でやろうとすると、軒並み断られるのだ。
映画は、そこから、日本の風俗史に切り込んでいく。
元々、日本の性表現はおおらかで、
春画も嫁入り道具のひとつだったりしたらしい。
大名家もほとんどの家が春画を持っていたらしい。

ひとつ目の受難は享保の改革で、表向き禁止されたこと。
けど、これは春画が地下に潜ったことで、
表では出来なかった、更なる表現へのステップにもなって、
春画のクオリティーを上げることにもなったらしい。

今に至る春画をタブー視する、
春画にとって、凋落の大きな原因となったのは、
やはり、あの明治維新。
「美術」という言葉が生まれ、
題材も美的なもの、哲学的なものじゃないとダメ、
みたいな方針が打ち出され、春画は猥褻物として、
犯罪対象になってしまった。

ちなみに「猥褻」=NGという概念もこの頃生まれたらしい。
全部の基準を西洋において、西洋にないものはダメなもの、
みたいな他人に頼った価値基準を置いたので、
自国が世界に誇るべき、大切な財産を失いかけたのだなあ。
西洋のポルノグラフィーとは、全く違う基準で、
性表現を高めていたのに、惜しいことをしたもんだ。

そのちょっと後に、西洋から裸体像が入って来るのだから、
皮肉なもんではある。

結局、その展覧会は、大名家の子孫、細川護煕元総理の快諾で、
細川家の永青文庫で、実施された。
元大名家の心意気!文化をよく知ってて、パトロンになる。
さすがやなあ。
ある意味、今でもノブレス・オブリージュを果たしてるんやなあ。
その後、京都細見美術館でも開催されたらしいが、観逃していた。
めちゃくちゃ、残念。

ほんま、皆さんに観て欲しい、ワシお勧めの映画です。

観終わった直後、一番感じたのは、
薩長土肥の方には悪いが、
「明治政府って、ホント野暮。野暮にもほどがある!」
ということだった。
ワシ、ますます明治維新嫌いになるなあ。

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