映画「散ルカモネ」byシタンダリンタ。

シタンダリンタくんの新作をYouTubeで拝見した。
前作の「或いは。」は、諸般の事情で、
不特定多数には公開できなかったが、
今回は公開できるみたいなので、動画載せます。ぜひご覧ください。

始まって数秒で前回より進化してることがわかった。
地面から湧き上がってくるようなデグルチーニさんの声に負けずに、
と言うより、従えるようにして、映画が始まる。

もう若干16歳の、とか、去年まで中学生だった、とか言うのは止めよう。
面白い部分も、そうでない部分も、普通の映画を観るようにして、観ていたからだ。

テーマは、前回と通じるところもあるが、
(ザクっと言うと人間同士の考え方の違い、相容れなさ)
さらに新しい視座が加わっているように感じた。
そのひとつは、簡単に言ってしまえば、暴力性。
その暴力性を発揮するために、両親や、心の通じる友だち、
と言った暴力性を目覚めぬよう覆ってくれてるものを
一枚一枚剥いでいくようなストーリーも良く出来ている。
今、ストーリーと表現したが、観てる間に感じたのは、
この映画は「あらすじ」というようなストーリーで構成されているのではないなあ、ということだ。
どちらかと言えば、詩のように、心に感じた衝動と衝動を繋げて、
一枚の布を織っていくような構造をしているなあ、ということだった。

その構造を持っているからこそ、極端な表現をしても、
映画の輪郭が崩れてこないのではないか、
人によっては過激すぎると感じるような暴力表現も、
うまく映画の中に組み込まれている感じがした。

この映画の中でリンタ監督は、いろんな実験をしてるように思える。
それのひとつが、自分の中にある暴力の追求であり、
前作では観られなかったスローモーションやモノローグの多用でもある。
音楽と映像のコラボレーションは、前作もあったが、
前作ではストーリーの中に割り込むようにして挿入されてたのに対し、
今回は、よりストーリーに馴染む形での表現になっていた。
その「なじみ」も、この映画の構造を発明したことによる
(監督の中ではまさしく発明だったのではないか、と想像)、
メリットなのかもしれない。

すごいな、と思ったのは、快楽として
暴力を追求しているように見えて、
それが人間の寂しさを深く掘った末の爆発でもある、
と位置付けられているように思えたこと。
遊びのためだけの暴力ではなく、何か自分の心に欠けたもの、
満たされないものを渇望して、それが踏み誤った末の暴力であること。
こういう視座を持たなければ、今の時代、往々にして起こる
猟奇的な事件を読み解けないのではないか、とも思った。

面白かったのは、その猟奇的な事件に対する世間の反応も
監督の年齢ならではの中高生の言葉で語られていること。
それが、昨今のワイドショー的な反応と重なってくることであった。
ああいう事件は、同時代を生きている人間をどうしても不安にする。
不安の裏返しとして、その事件を野次馬的に面白がる、
笑い話にしてしまうことで「自分とは関係ない話」という箱に
しまってしまおうとする人たち、
ちゃんとその事件を見つめようとしない人たちが、いかに多いことか。
話は飛んでしまうが、沖縄で起こる数々の問題は、
内地で暮らすワシらの問題でもあるのだが、
それに対して、無関心を装う人々の反応、
「また沖縄がなんか言ってるよ」的な反応を示すことも、
これと同じことなんじゃないか、と映画観ながら思っていた。

最後の終わり方(ネタバレになるので詳しくは言わないが)、
「ほほう!そう来たか!!」と感心してしまった。
あの終わり方で、監督は「これは誰にでも起こりうること」
「監督と同じ年代の少年少女の誰にでも、こういう部分があるのだ」
ということを表現したのではないか、と思ったのだ。
つまり、ホッとさせるよう見せておきながら
「どれでけ無関心装ったり、野次馬として見ようとしてもそうはいかないぞ!」
という攻撃的な終わり方ではないか、とワシは思ったのだった。
もちろん、これはワシの見方であって、
それぞれ、どんな解釈をしても自由だと思うが、
ワシとしては、前作の企みからしても、
そんな平和裡にことを終わらす監督ちゃうやろ、
と睨んでいるので、こういう解釈になってしまったのだろう。

最後のタイトルロールも感心した。
文字の書体がひとつひとつ凝っているのだ。
もしかしたら、ワシが知らんだけで、
そういう書体があるのかもしれんが、
それにしても、かなりの確信がないと
選べないフォントではあると思う。

前作でも感心してしまったが、この作品で、
すっかりシタンダリンタ監督のファンになってしまった。
桜川晴子ちゃんが出るという次回作も、本当に楽しみだ。

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