40年近く前から、世界は同じ課題を解決してないことが分かる。BBBムービー「風が吹くとき(日本語吹替版)」。
1987年に、こんな映画が生まれてたんやなあ。
べルリンの壁、崩壊前夜、当時のヨーロッパの人は、
けっこう本気で核戦争のことを心配してたんやろな。
けど40年近く前のアニメーションとは思えないほど、クオリティ高いし、
音楽はピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズで、
テーマソングがデヴィッド・ボウイ、
日本語版の吹き替え演出が大島渚さんで、
声優が森繁久彌さんと加藤治子さん、
豪華で納得いく布陣である。
物語に出てくる簡易核シェルターがお粗末すぎて、
笑ってしまうくらいなのだけど、
これ、ほんまに1974年から80年まで、
イギリス政府が推奨してた防御策らしい。
本気で国民を守ろうとしてるのだろうか。
登場人物は、しっかり者のおじいさんと、おっとりしたおばあさんの二人だけ。
ちらっと息子が電話で登場するが、姿として出てくるのは、
このおじいさん、おばあさんだけ。
イラストがスノーマンのレイモンド・ブリッグズなので、
すごく可愛らしいのだけど、
それだけに、物語の悲惨さがずっしりのしかかってくる。
二人とも、政府を信じ切っていて、
ちょっととんでもないことでも、
「政府の言うとおりにしてれば間違いない。
今に助けに来てくれる。」と思ってるのが、
映画全体の、ものすごくシニカルで皮肉な表現になっていると思う。
やはり自分自身で考えていくことが、
何より大切なのだなあ、と改めて思う。
この映画が生まれた時からずっと、
世界は同じ課題を解決できないでいる。
世界中に、きな臭い匂いが溢れている2024年にこそ、
観ておいた方がええ映画やと思う。
この二人のようにならないためにも。
いや、この地球から核兵器がなくなり、
戦争がなくなる日まで、
何度でも観なくちゃいけない映画なのだと思う。