「ちょっとやばかったみんなが知らない糸島のカフェサンセットの話」手島裕司。

かなり嫉妬した。
この本の登場人物たちに。そして、この本の作者に。

2002年か2003年頃、福岡に住んでるときに、
友だちに誘われて糸島半島の西側、
芥屋という海岸でやってるサンセットライブに行った。
人混みが苦手、フェスもあまり好きではなかったので、
気乗りしなかったのだが、
行くと、他のフェスにありがちな「楽しまなきゃ損!」みたいな
前のめりな感じがまったくなく、
ゆるゆるで脱力してる感じが心地よく、
2005年に大阪に戻ってからも、しばらくは、
9月第一週の金土日になると、サンセトライブのためだけに
福岡に行ってた。
このライブで好きになったバンドもたくさんあるが、
それよりも、波の音が聴こえるところで、
酒飲みながら、ええ音楽に体も気持ちもゆだねてる雰囲気が
たまらなく気に入ってた。
「誰が出てるから」とか「いいライブだったから」とかではなく、
それ自体が好きになった初めてのフェスだった。

聞けば、このライブは、元々、サンセットというカフェが、
店の前で好きなミュージシャン集めて、やってたライブらしい。
規模が大きくなって、今は芥屋に移ってきたし、
カフェサンセットも、元の場所から移動したらしい。
ワシは、昔のサンセットライブもカフェサンセットも
知らないままだったし、移転後のカフェサンセットにも
行ったことのないままだ。

そのカフェサンセットと、サンセットライブの始まりから今までを
関係者のインタビューを中心にまとめる、という面白い企画の本が出た。
しかも、作者は、ワシの遊び友達(仕事仲間ではない)で、
敬愛する手島さんだ。
読まない手はない。

創設当時の関係者から、現在の関係者まで
一応、時代を追って、インタビューが載っているが、
もちろんずっと関わってる人の話は、昔のことだったり、
今のことだったりするし、
人の記憶中心に紡いでるので、ディティールが合わないところも
いくつかあったような気がする。
年表として、記録としては穴だらけかもしれないが、
この本はこの本のままでいいと思う。
そんな記録よりも大事な、その時代時代のグルーヴみたいな、
何もないところからモノを作るときに一番大事なものが
伝わってくるのだから。

本を通じて思うのは、みんながみんな一様に、楽しそうに語り、
カフェサンセットを、サンセットライブを愛している、
ということだ。
初めは、店の前のビーチでやってたライブが、
3日間で万を超える人を集める大きさになったのだから、
初期の頃の人が「昔の方が良かった」と言ったりするのは当然だけど、
それでも、それぞれが、それぞれにサンセットを愛する思いが伝わってくる。

長期の計画なんて、何にもない。
それぞれが好きなこと、やりたいことをやった結果、
多少の行き違いはもちろんあっただろうが、
個人の思いという歯車が、いろいろうまく回って、
大きくなりながら進んでいったのだと思う。
なぜ、多少のイザコザがあっても、結果的には
うまく進んでいったのか。
それは原動力が、儲けとか効率とかではなく、
「好き」だったり「こんなことがやりたい」だったり
するからだろう。
素晴らしい。

官製の文化がうまくいかないのは、結局、スタートラインに
この大事な原動力がないからなんではないか。
カフェサンセットができた頃は、何もなかったという、
糸島は、ワシが福岡にいた頃よりさらに発展して、
日本有数のビーチリゾートとして、リゾート文化を育んでいる。
福岡市内から約1時間で行ける、と言う地の利や、
風光明美で海の幸、山の幸に恵まれている、
という条件があるのはもちろんだが、
その出発点のひとつに、このカフェサンセットがあることは
間違いないだろう。
そういえば、何年か前、糸島の酒造所の蔵開きに行ったなあ、
糸島には、美味い酒もあるのだ。

そのそもそものスタートは「海を見ながら暮らしたい」という
ひとりのサーファーの思いだったと言う。
だから、サーフスポットの真前、夕日が海に沈むビーチに
初代のカフェサンセットはあったと言う。
そして、自然を大事にするサーファーたちの思いは
今も引き継がれている。
だからか、サンセットライブに行っても、
会場には驚くほどゴミが少ない。
最初の気持ちがちゃんと受け継がれてるのも、ええなあ。
昔は、サンセットライブの会場に二日市温泉から運んだ足湯があって、
足湯に浸かったり、マッサージ受けたりしながら、
ハンバートハンバートやゴンチチ聴いて、
「極楽やなあ」と思ったこともあったが、
それも、「好きなことがやりたい」「こんなことやってみたい」の
形のひとつやったんやろうなあ。
足湯は、経費とか労働力の問題で、なくなってしまったと聞いたが、
「とりあえずやってみる」というとこからしか、
新しいもんは生まれないって気もする。

インタビュー読んでると、いろんな人の名前が出て来るので、
「この人はどんな人だったっけ?」と
その人のインタビューのとこ探して、もう一度読んだりするのだが、
そのときに「この人の写真があれば、話早いのになあ」と思った。
きっと読んでて、さらに一人一人に思い入れもできるはず。
改訂版出すなら、モノクロでもええんで、是非お願いします!

ワシも、これからはできるだけ、好きなこと、
やりたいことだけやって生きていきたいと思ってる。
そんなワシには、なんか教科書になるような本でもあった。
そして、糸島という地域の活性化を根本から知る
地方創生の教科書になる本かもしれない。

きっと本には書けなかったすごいことが
いっぱいあるはずだと思う。
そんな話含め、いろいろ生の声で聞けた手島さんが羨ましい。
こんな素晴らしい本の作者になったことも、羨ましいけど。
今度手島さんに会ったときには、
裏話をたっぷり聞いてみたい。
多分、あと本二冊になるくらいの「裏サンセット」が
あるはずだと睨んでいる。

今年は久しぶりにサンセットライブに行ってみるか。
行けたら、初めてのカフェサンセットにも寄ってみよう。
そう言えば、長年福岡に住んでるくせに、
サンセットライブに行ったことのない手島さんを
サンセットライブに誘ったのは、ワシだった。
本によれば、手島さんに任せたのは、
手島さんがサンセットライブのファンで、
毎年行ってるから、とあった。
印税の何パーセントとは行かないが、
今年のサンセットライブのチケット代と、
カフェサンセットの代金くらいは
奢っていただく権利はあると思うのだが、
いかがだろうか。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


食べもん

前の記事

先杯晩ご飯。