岡本喜八「血と砂」。(ネタバレあり)

ここ数ヶ月、密かに三船敏郎ブームで、家でちょくちょく観ている。
今日は、これまた好きな岡本喜八監督の映画に出た三船敏郎を堪能した。
個人的には、黒澤映画の三船敏郎より、こっちの方が「人間」て感じがして
好きかもしれない。
そんなにたくさん観てないので「ちゃうぞ!」と思われる方も多いかもしれません。
異論のある方、すんません!

この映画「血と砂」、いろいろとんでもない。
まず、戦争映画なのにミュージカル的要素も入っている。

大戦末期の中国戦線で闘う日本の少年兵十三人が、
朝鮮人の従軍慰安婦に童貞切りをしてもらう、
って、シチュエーションも、今だと国際問題になりかねない。

その少年兵は音楽学校出たばかりで、元々楽隊として従軍してたのに、
戦争末期ってことで、兵隊が足らず、三船敏郎演ずる小杉曹長に
兵隊として鍛えられつつ、中国軍の砦を奪う戦いに、
あとわずかの兵隊とともに主力として、参加させられる。

少年たちのお父さん役のような小杉曹長が、なんとも頼もしく、かっこいい。
少年たちとのやりとりは、戦争映画なのに、微笑ましくさえある。
奪取した砦に、その従軍慰安婦「お春さん」がくると聞いて、
少年兵たちが喜んで「お春さん」という歌を演奏するシーンが、
なんとも微笑ましくて好きになった。
そのシーンの動画がなかったので、映画のトレーラーを。

岡本喜八らしい、皮肉とユーモアあふれる映画だが、
最後のシーンの悲惨な美しさは、素晴らしかった。
小杉曹長も亡くし、総攻撃に合い、武器も底を付き、
残った楽隊員達は、武器ではなく楽器を手にする。
最後の力を振り絞って、「聖者の行進」を演奏する。
しかし、なってる楽器の音が、ひとつ、またひとつと消えていく。
最後にフリージャズのようなトランペットが残される。
一時捕虜になっていた敵兵が、何か紙を持って、
砦に向かってくる。
それまで、死んだ人を敵味方関係なく葬ったり、
手厚く扱ってた葬儀屋出身の中年の兵隊が、
初めて鉄砲を持って、その敵兵を撃ち殺す。
その敵兵が手に持ってたのは、終戦を知らすチラシ。

その瞬間、轟くような総攻撃で、葬儀屋も倒れ、
トランペットの音も途絶える。
戦争の虚しさが、これでもか、これでもか、と胸を打つ。
どんな大義名分があろうと、戦争は、
勢力拡大のための殺し合いでしかないのだなあ、と実感する。

この映画、当時はあまり話題にならなかったのか、
資料もあまり検索できなかったが、
とんでもない名画やと思った。

資料探してたら、面白い広告が見つかったので、
最後におまけで上げときます。

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