「親に甘えたい」という気持ちは、誰もが持ってるものなのだろう。BBBムービー「異人たち」。

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山田太一さん原作、大林宣彦さん監督の「異人たちの夏」が、
イギリスでリメイクされたと聞いたので観てきた。

どこまでが現実か、どこからが夢か、
主人公ですら、生きてる人間なのか、あの世の人なのか、
わからなくなるような不思議な感覚は、
原作や、日本版と共通しているように思えた。

幼くして、会えなくなってしまった両親、
それから、耐えながら、我慢しながら、
なんとか生きてきたけれど、
人間は、どこかに誰かに甘えたいという気持ちが、
常にあるものなのかもしれない。
ましてや、一番多感な頃、甘えられなかった主人公、
その過去を、取り戻すように、塗り替えるように、
両親に甘え、過去をやり直す。

イギリス版では、そこに主人公がゲイであることが加わる。
生きてる間に、両親に伝えられなかったそのことを伝え、
三者とも、もがき苦しむ。
時代を考えると、主人公の少年時代は、
イギリスではサッチャーイズムの時代、
マッチョイズムが跋扈して、
同性愛への偏見が、今とは比べ物にならないくらい、
激しかった時代なんだろう。
カミングアウトする主人公にも、
相当の勇気が必要だったろう。

両親にも苦悩と葛藤があっただろうけど、
なんとか受けいれてもらい、
その頃の苦しみを打ち明け、
抱きしめてもらう。
なんとも美しく、嬉しいシーンだ。

きっと「親に甘えたい」「すべてを受け入れてほしい」という気持ちは、
洋の東西を問わず、
親が生きている人でも、
すべてを打ち明けられているとは限らないので、
この映画の主人公の気持ちは、
多くの人に届くのだろうと思う。

結末は、日本版とは、違う展開だったけれど、
これはこれで、間違ってない、と感じた。
もしかしたら、主人公も、彼岸の人なのかもしれない。
それは、観た人が感じるままでいいのだろう。

観終わって、日本版の「異人たちの夏」をもう一度、観たくなった。
それを観た上で、この映画も、改めて観てみたい。
そんな後味を残す、いい映画だった。

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