佐野眞一「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」。

佐野眞一氏の「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」を読了。
文庫本上下巻あわせて1000ページ近くにも及ぶ大著。
暴力団の抗争、基地問題、経済界、実業界、政治家、琉球王家、民謡…。
沖縄の戦後の事象についてついて、丹念に調べ上げた労作である。
大江史観からも、日本政府のご都合主義からも距離をおいて、
事実を客観的に追及している姿勢には、頭が下がる。

被差別民がさらなる被差別民を生む、という定説を証明するかのような、
沖縄の奄美への差別、
ダイエー帝国を生みだすのに沖縄が果たした役割など、
なんとなく聞いてたけど、理解はできてなかったことを
いろいろ知ることができた。
気になって調べようと思ってた瀬長亀次郎のことも、詳しく載っていた。
いい機会になった。

しかし、どんなジャンルの沖縄の人を見ても、共通の意識があるような気がした。
うまく言えないけど、したたかでありながら、おおらかでもあり、
同族意識みたいなもので結ばれた共同体的なものだろうか。

殺しあいの抗争を続けた暴力組織の関係者が自分を狙ったヒットマンの
現状を作者に「元気にしておりますか?」と聞くシーンに、
強烈な沖縄を感じた。

沖縄の戦後史を知るための道しるべ、日本の戦後の沖縄問題に関する
道しるべにもなるが、
面白い人物が、多数載った人物伝としても、読めるのではないか。
それくらい、たくさんの魅力的な人に溢れている。

一番、人間的に興味を持ったのは「海燕ジョーの奇跡」の
モデルになった日島稔さん。
フィリピンとのハーフとして生まれて、父親の顔も知らない日島さんは、
成績優秀だったにも関わらず、経済的な理由などで、進学はせず、
渡世の世界に入り、第4次沖縄抗争の主役となり、
対立する組織の組長を射殺する。
物語では、そのあと、フィリピンに父親を捜しに行くが、
実際はすぐに自首して服役、
出所後は、足を洗って、観光船の船長などを、していたそうだ。
そして2009年、なぜか、遠距離船の経験などほとんどないのに、
いかの漁に出て、多良間島の隣の水納島沖で座礁して、
他のベテラン乗組員は何とか水納島で救助されたにも関わらず、
遠洋漁業に関しては素人の日島さんだけは、今も行方不明なんだそうだ。

ワシが初めて多良間に行ったのが、2009年、
同じ年に日島さんは、
多良間のすぐ近くの海で、遭難した。

「海燕のジョーの奇跡」をもう一度、見てみよう。

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