川本三郎「マイ・バック・ページ」。

今週は、なぜか個人的には「学生運動の週」だった。

日曜日は、映画を見て原作を読みたくなった川本三郎の「マイ・バック・ページ」を読む。
そしたら次の日、TSUTAYA DISCASで若松孝二の「実録・連合赤軍」が届いていた。
すごいタイミングだなあ、と思いつつ、昨日、観た。
長文になるので、二つに分けて感想を。

まず、「マイ・バック・ページ」。
この本は、1970年前後の学生運動の記録、というより、
その頃、ナイーブな時期を過ごした世代の青春記と考えた方がいいと思う。

前半は就職浪人して、新聞社系雑誌記者になった川本さんの追想記。
そして、後半は、スタイルは追想記のまま、川本さんが巻き込まれ、
逮捕され、会社を解雇になった「朝霞自衛官殺害事件」について。

元々音楽、映画、文学などに興味の中心が向いてて、
その頃の若者が夢中になったアメリカンニューシネマや、サブカルチャーに
関わる仕事がしたいと思ってた青年、川本さん。
しかし、その頃の同世代が立ち上がった学生運動にも、無関心ではいられなかった。
いや、というより、そのセンターに立っていないことに、
ある種の罪悪感を感じていたのだと思う。
文中に出てくる言葉で言うと「センス・オブ・ギルティー」か。
その気持が、決して学生運動の王道ではなく、
時流に乗りたかっただけ(に思える)の胡散臭い青年の学生運動の名を借りた、
殺人事件の関係者として、巻き込まれる原因となったのだろう。
胡散臭い青年も学生運動の中心には乗り遅れ、
なんとか注目されようともがく青年だった。
その立ち位置の近さに、川本さんが、シンパシーを感じた部分もあるのだろう。
「甘かったと言われれば、認めるしかない」という言葉が何度も出てくる。

一番思い出したくなかった、青く、甘く、理想を求めた時代の
川本さんなりの「告白」、
この事件から解放されるための告白が、この本なのだろう。

そして、この本を原作に映画を作った山下敦弘監督の才能には驚かざるを得ない。
まだあの時代には生まれてさえいなかった山下さんは、
この本の後半部分に、前半部分を混ぜながら、
普遍的な若者の青春後悔記、ともいうべき作品を作った。
原作にはないラストシーンは、山下監督の真骨頂だと思う。

是非、原作、映画、どちらからでもいいので、両方見てほしい作品だ。

題名になってる「マイ・バック・ページ」。
オリジナルはもちろん、ボブ・ディランですが、
個人的にはバーズの方が好きなので。

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