ミュージアム梯子。

今回の宿を上野にしたのは、
気持ちのいい秋の日に、散歩を楽しんで、美術館巡りする、
という目論見だったのだが、
調べると行きたくなるような展覧会は上野ではやってなかった。
さらに、ワシの腰痛、おまけに、この台風接近で一日、しのつくような雨降り、
東京散歩の野望は脆くも散った。

とりあえず、メトロ乗り継いで、東京国立近代美術館へ。
4月ごろ日曜美術館かなんかで観て、「行きたいけど、東京かあ」と諦めてた
「ピーター・ドイグ展」が、この騒動で、一時休止になってたらしく、
期間延長してやってたのだ。ラッキー！！

ピーター・ドイグ、実物は始めて観たが、素晴らしかった。
一つ一つの絵が、思ったより大きくて、びっくりした。
なんかこの時代になって、
やれインスタレーションだ、やれCGだ、三次元だ、ゆーてるけど、
絵具を使った絵画はやっぱり強い。
絶対になくならないアナログ表現やな、と思った。
しかも、ピーター・ドイグのは、明らかに、今の時代の絵画やなあ。
ほかの表現からの手法がフィードバックされてるのもあるけど、
対象との距離感や、色使いそのものが、今の時代らしい。新しい。

事務所でやってた映画鑑賞会のポスター、ささっと描いたものらしいが、
どれも、めっちゃ良かった。映画のチョイスもさすが！
日本映画がけっこう多かったのも、なんか嬉しかったな。

美術館のことを言うと、写真取り放題なんは、ええな。
こうやって観客として観ながら撮った写真が
商売には、さすがになんかならんやろうから、
撮ってもろて、SNSで拡散してもらう方が、
よっぽど美術館にもメリットあるんやろな。

東京国立近代美術館の建物自体は、初めて行ったけど、
なんか「古いなあ」以外、あまり何も感じず。
また来たくなるような建物ではなかった。

導線が複数ある展示方法は、ちょっと戻ったりが、
しやすくてわりと良かったな。

観終わって、展示室から出たとき、ちょっと腰が痛かったので、
座るとこ探したが、見つからず。
美術館の方に聞くと、感染防止対策で
パブリックスペースの椅子は全部取り外したと言う。
それは、どうなんやろ。なんか納得いかんなあ。
街中の美術館でもないんやし、おる人みんな美術館の客やろうし、
展示室の中には椅子あったし。
座ることで感染するってなら、中の椅子の方が、
人通りも多いし、座って観たい人もいるし、
よっぽど危ないんちゃうん。と思ったが、仕方なく、外に出て、
九段下の駅を目指す。
途中、イートインのあるコンビニがオアシスに見えた。
ゆっくり座って、腰の痛みが和らぐのを待つ。

九段下の駅で、「ザ・バンド」の映画告知観て、嬉しくなる。
もうすぐ公開やな。絶対観るぞ！

渋谷で懐かしいやつと昼食、
やはり渋谷は落ち着かない。
ケツの穴がムズムズするが、久しぶりの再会は嬉しかった。
昼食を渋谷にしたのは、相手の提案だったが、
ワシが次に行きたいとこも、考えてくれた上での提案。

京王井の頭線で二駅の駒場東大前へ。
渋谷から二駅とは思えない静かで、緑の多い住宅街を抜け、
ずっとずっと来たかった日本民藝館へ。

ワシは、柳宗悦さんをめっちゃ尊敬してるのだ。
どんな展覧会やってるか知らずに来たが、
アイヌの手仕事みたいな展覧会やってて、素晴らしかった。

常設展も、河井寛次郎やバーナードリーチ、
濱田庄司らワシの憧れのスターたちの作品がズラリ。
しかし、そういう人たちの作品は、他でも山ほど観てきた。
玄関先、吹き抜けの椅子に座ってたとき、気がついた。
ああ、ワシは展示物というより、この場所に来たかったんやな。
この建物を観てみたかったんやな。
この雰囲気に包まれたかったんやな。
柳宗悦さんの作ったこの空間に。
ふわーと気持ちいい眠気に襲われ、
たぶんほんの数分だが、落ちていた。