寮美千子編「空が青いから白を選んだのです」

うどん屋で、ボロボロ泣きながら、文庫本を読む中年男。
さぞかし気持悪かっただろう。

定年を迎えられ、弊社を卒業された先輩から贈られた本、
「空が青いから白を選んだのです」を読んだ。
この本は、奈良少年刑務所の「刑務所の教室」で
少年たちに詩を教える作者が編んだ、少年たちの詩集。

奈良少年刑務所と言えば、
明治の大建築家、辰野金吾に師事し、
いわゆる五大監獄を設計した山下啓次郎氏の設計のひとつ。
ワシは啓次郎氏のお孫さんにあたるジャズピアニスト、
山下洋輔さんの「ドバラダ門」以来、
啓次郎さんの建物との二度目の接触になる。

この少年たちの詩の、計算のない言葉のいかに美しいことか。
いかに真っ直ぐなことか。
ワシには、こんな言葉はとても書けないと思った。

「刑務所の教室」の詩の授業は、月に一回、半年間続くと言う。
初めは、絵本を読むのを聞いてもらったり、読んでもらったり、
そして金子みすゞさんなどの詩を朗読したりするらしい。
そうやって、詩へのハードルを下げたあと、
詩を書かせると、人によって、遅い早いはあるけど、
ほとんどの子が、吐きだすように詩を書き始め、
表情も生きたものに変わっていくという。
それまで封印されてたものが解き放たれるのだろう。

笑ったり、泣いたり、喜んだり、怒ったり、
苦しい、と誰かに助けを求めたり、
受刑者の多くが、そういう当たり前のことを体験せず、
自分でも知らない間に、いろんなことに蓋をしてきてしまったのかもしれない。
蓋を閉めれば、中のものはなくなるわけではない。
そして、そういうものに蓋をしてしまって生きることは、
どこかにひずみを生んでしまうのだろう。

もちろん、犯罪は憎むべきものであり、
状況や社会のせいにして、
許されるものではないかもしれない。
だけど、もし、この子たちが、ここに来る前に、
そういう感情を封印していなければ、
被害者も生まれなかったのかもしれない、
と思わずにはいられない。

そして、この本でも多くのページが割かれている母への思い。
どれほど辛い仕打ちを受けても、どれほど迷惑をかけても、
それぞれに複雑で、それぞれの形は違うが、
みな同じように母への愛を抱き続けているのだなあ。
受刑者の詩の一節にあった言葉。

『人を愛することと 憎むこと
 はじめて教えてくれた人』

この詩には、もちろんこの言葉に至る母との葛藤があるのだが、
この言葉を見た瞬間は、背筋が凍るような思いをし、
しばらくして涙がこぼれて仕方なかった。

そもそも、刑務所とは、何のためにあるのだろう。
罪を犯した人を一定期間閉じ込めておけば、反省して、
二度と罪を犯さなくなるのだろうか。
そんな虫のいい話、あるはずない。
特に少年刑務所において、
こういう教育は、彼らが社会に出て生きて行くために、
二度と罪を犯さないために、一番大切な
刑務所の役割なのではないか、と思った。

奇しくも、この本を読み始める直前、
「子どもの貧困」に関するセミナーを受けた。
問題が一本の線で繋がっているように思えた。
原因は貧困かもしれないし、育児放棄かもしれないけど、
今も、感情に蓋をしたまま育ちつつある子どもたちがいる。
何もせずに彼らに想像力を求めても、無理な相談だ。
それが育つ環境を作ってやることが、
大人の、社会の、政治の役割であり、責任であるのではないか。

そんなことを思いながら、この本を読んでるときに、
川口祖父母殺害の特集番組を見た。
加害者少年の逃げ場のない気持が、
ワシの中に怒涛のように流れ込んで、
ひとり嗚咽した。

子どもが、子供らしく、笑ったり泣いたりできる社会、
そんな社会のために、ワシは何ができるだろうか。。

長々と書きました。
ひとりでも多くの人に、この本を読んでほしいと思ったので。
ワシも、もう一度、読もうと思ってます。
福嶋さん、どうもありがとうございました。

投稿した文章は、ここまでなのですが、
これのリアクションにも、示唆に富む話が多く、
編者の寮美千子さんも書き込んでくれたので、
それもよかったら、お読みください。

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