人は毎日、飯を食う。映画「土を喰らう十二ヵ月」。

60歳になって、シニア料金で映画館行けるのが嬉しくて、行きまくってしまい、
反動で少し映画から離れたくなってしまったので、
ここ10日ほど、映画観にいってなかったのでけど、
この映画「土を喰らう十二ヵ月」だけは、どうしても観ておきたかった。
なにしろ、水上勉さん原作で、脚本と監督が「ナビィの恋」の
中江裕司さんなのだから。
しかも、主演は、ジュリー。
おまけに音楽は大友良英さん。
内容知らなくても、観に行きたいくらいや。

ジュリーの静かだが、饒舌な演技に感動してしまった。
言葉ではなく、表情や間で、物語が進んでいく。
信州の、季節ごとの美しい景色の中で。
しかも、山菜中心の土井善晴先生の料理が、どれも美味そうすぎる。
飯食って、わりとすぐに観たから良かったものの、
空腹だったら拷問のような映画鑑賞になるところだった。

物語は、静かに、ゆるやかに季節とともに動いていく。
かと言って、大きな事件が起こるわけではない。
人が生きていれば、誰もが巡り合うような、
できごとが、積み重なっていく。
中江さん、こんな静かな物語を描く境地に至らはったんやなあ、
と、何か不思議な気持ちになった。
けど、映画観終わって少し時間が経つと、
それはすごく自然で、素晴らしいことのように思えてきた。
中江さんが、過ごしてきた豊かな時間が、
この映画に表れてるような気がした。

ジュリーは見事に初老の男だった。
体型も、ちょっとノロノロとした動きも、
スターのジュリーではなく、老年を迎える普通の男だった。
あまり役者として、意識したことはなかったけど、
「こんな繊細な演技のできる人やったんやなあ」と
少しびっくりした。

ショーケンなど、同世代のスターたちが
強烈な印象を残して、この世を去った後、
生きている沢田研二さんが、
オーラを消した演技をしているってことが、
逆に、すごいことのような気がした。

物語は、少しの異物感を残して終わったが、
ワシの中には、何か気持ちのいいものが溢れ出したような気がした。
毎日を大切にしよう。
自分に真っ直ぐに、丁寧に生きていこう。
そんなことを思いながら、席を立った。


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