三好達治さんの純粋と狂気。映画「天上の花」。

※多少、ネタバレあり。

三好達治さんの、萩原朔太郎さんの妹との、
福井での生活をメインに描いた映画「天上の花」を観てきた。


三好達治さん、詩をいくつか知ってるだけで、
人物までは、よく知らなかったんやけど、
ほんまにこんな人やったんか?
と、驚いてしまった。

美しい風景や、綺羅星のような日本文学を代表する人が出てきて、
華やかな側面の大きい映画だけど、
そういう背景を取り去ってしまえば、
ただの、子どもっぽくて、狭量なDV男の物語でしかないような気がした。

三好達治役の東出昌大さんが、すごい。
狂気を秘めた独占欲の強い男なのに、
その瞳が、吸い込まれそうなくらい無垢。
恐怖を感じるほど、純粋。
こうでないと、この矛盾に満ちた人物は成立しないような気がした。

男尊女卑が、今以上に当たり前だった時代、
しかも戦時中。
だけど「暴力に慣れるのが、怖い」という言葉は、
今の時代でも、暴力で誰かを支配しようという状況に、
共通する言葉ではないのか、と思った。

きっと、この映画の中の三好達治は、
詩人でありながら、言葉の限界も知っている。
そして、暴力で人を支配できる、
という幻想をどこかに持っている。

だから、戦争を賛美する詩を書き、
言葉で相手を説き伏せられなくなると暴力に頼るのではないだろうか。

三好達治さんの詩を読んだ時、
どこか過剰で、自己陶酔してるように思ったことがあったけど、
この映画は、その印象と「答え合わせ」のように
同じベクトルを向いてる気がした。

この映画は、今の時代に創られた意味は大きい気がする。
再び、暴力が世界を動かそうとしている、この時代に、
この映画は「人の心は、暴力や金では、根っこの部分は動かせないのでは」
ということを問うている気もした。
2022年に、この映画を観て、良かったと思う。

原作が、朔太郎さんの娘の萩原葉子さん、
つまり慶子さんのモデルになった人の姪っ子というのも、
なんだか恐ろしい気がするなあ。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA