おとぎ話のような実話。映画「シュガーマン」。

シュガーマンという、奇妙な音楽ドキュメンタリー映画DVDを観る。
1970年頃、アメリカで二枚のアルバムを出した
ロドリゲスというメキシコ系の歌手の物語。

時代を映して、プロテスト系の歌やお薬系の歌もあって、
個人的にはなかなかええなあ、と思ったんだが、
アメリカでは鳴かず飛ばずで、
二枚のアルバムを残して、何処ともなく消えてしまった。

しかし、なぜかアパルトヘイト時代の南アフリカで大流行り。
アパルトヘイトへの抵抗のシンポルになって、
誰もが知ってる、現地の人に言わせると
「プレスリーより有名」な存在だったらしい。
当然、政府は快く思わず、LP盤に傷を入れて、
徹底的に封殺しようとするのだが、
当時4000万の人口の南アフリカで100万枚売れたってんだから、
プレスリーより有名も、ホラじゃないかも、と思ってしまう。

でも、本国アメリカでは全然人気なかったので、
歌ってるロドリゲスについてはなんの情報も入って来ない。
当時、アパルトヘイトのせいで、
世界から経済や情報を封鎖されてた南アフリカなら、なおさらなんだろう。
それでも「アメリカでは売れてなかった」という噂は知ってたのか、
「あまりに売れないのを苦に、罵声の飛ぶライブでひとこと残して、
ステージ上で拳銃自殺した」って噂までまことしやかに囁かれる。

で、アパルトヘイト撤廃後の1990年代末、
南アフリカのジャーナリストが
「ロドリゲスの死の状況を確かめる」取材を始める。
ところが、ロドリゲスは生きていたのだ。
デトロイトで肉体労働をしながら。
スーツで現場に来る哲学者風の肉体労働者として。
もちろん自分が南アフリカではスーパースターだなどとは
本人も、つゆとも知らず。

そして、とうとう娘たちを連れて、南アフリカツアー。
ツアーはどこも満員ですごい盛り上がりだったそう。
そして、このロドリゲスに憧れて音楽を始め、
南アフリカを代表するバンドになったメンバーが、彼をサポートする。
そのメンバーの言葉。
「こんなに沢山の観客を前に、彼は戸惑うんじゃないかと思ってたけど、
そんなことまったくなかった。やっといるべき場所に立ったって感じだったよ」。
いいなあ、全然舞い上がってないようだ。
その証拠に、このツアーで得た金は、
すべて、娘たちや周りの人に配ってしまったらしい。
そして、娘の一人は、このツアーの警備をしてた人と恋に落ち、出産。
なんと、ロドリゲスがスーパースターの南アフリカに、
ロドリゲスの血を引く子どもが生まれたと、南アフリカの人も大喜び。

という奇妙だけど、なんか楽しい映画で、
いい人しか出てこない映画やったんやけど、
唯一!南アフリカでの売り上げを、ロドリゲス本人をちゃんと探しもせず、
着服してた{ように思われる)サセックスレコードの当時の黒人社長だけ、
悪い顔してたなー。
漫画BECKに出てくる、
悪徳プロモーターみたいやった。

そう言えば、ワシの高校の同級生の男前の泰ちゃんは、
ワールドカップ直後の南アフリカに赴任するという、
生まれつきの間の悪さを持つ男なんだが、
泰ちゃんのおるときにも、ロドリゲスは有名やったんやろか。

2022年現在も活動中で、
ブライアン・ウィルソンとツアーを回ったりしてるようです。
(20230728記)

映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』で脚光を浴びたロドリゲスの物語、そして描かれなかった事実

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