きつい表現の枠が、さらに表現を深めた印象。BBBムービー「君は行く先を知らない HIT THE ROAD」。
※多少のネタバレあり。
昔、アッバス・キアロスタミやジャファル・パナヒなどが監督する
イラン映画にハマってたことがあったが、
ジャファル・パナヒの長男、
パナー・パナヒの監督デビュー映画であるこの映画も、
ふたりの世界に共通する、荒涼たる詩情みたいなものが、
ベースにあるような気がした。
その上に、独特のユーモアがあるところも良かったな。
![](https://bridgebybridge.net/wp-content/uploads/スクリーンショット-2023-09-07-21.48.11.png)
イランの国情を考えると仕方ないのだが、
このイラン版ロードムービーとも言えるこの映画も、
旅の目的自体は、はっきりとは示さない。
示せないのだろう。
それをミステリー的な味付けに昇華してしまってるのは、
見事やなあ、と思った。
足を骨折したお父さんのギブスに落書きした鍵盤を、
子供が押すと、それが音楽と同期するなど、
要所要所にセンスが感じられて、
この監督も注目やなあ、と思った。
笑わせたり、楽しませたりしながらも、
イランの国情をきちんと伝えてる演出には、
そうとうの技量も感じた。
とにかく次男が、やんちゃでかわいいのだが、
その分、この少年も、イランの状況が変わらないままだと、
10数年後には、同じような道を、と想像すると、
胸が痛くなった。
ほとんど使われてないのだけど、
予告編に使われてるような音楽も、そうとう好きやったなあ。
表現的に困難な状況を利用して、
さらに強く訴えかける、
楽しみな監督がまた出てきたな、と
少しワクワクしながら、映画を観終えた。