映画が終わっても、この二人には、時間が流れていて欲しい。BBBムービー「夜明けのすべて」。
※ネタバレ、あります。
カムカムエブリバディで夫婦だった二人が主演だからだろうか、
平日の昼間でも、ずっと結構混んでたので、
なかなか行けなかった「夜明けのすべて」、やっと観てきた。
久しぶりに、こんな清々しい気持ちになれたような気がした。
悪い人、意地悪な人が一人も出てこない。
そういう映画は、嘘くさく感じる、ひん曲がったタチなのだが、
この映画はそうならず「リアルやなあ」とか、
「こういうこと、現実だったらいいのになあ」とか思いながら観てた。
カムカムファンには悪いけど、
「お願いだから、この二人、カップルにならないで!」と思いながらも、観ていた。
異性でも、そうならずに思い合える関係、助け合える関係があってもええやんね。
二人ともが、普通でないことに悩まされるが、
お互いを見るうちに、普通でない自分を抱えながら生きていくことを
肯定できるようになっていく。
最近、よく「普通って幻想だよなあ」と思う。
誰もが、直せないかもしれない、何かを抱えてるんじゃないかなあ。
たとえ、すべての面で「普通」と言い切れる人がいたからって、
その人がそれで幸せとは限らない。
そりゃ治せる疾患は治したらいいんだろうけど、
疾患にも至らない、精神的な傾向とかを全部、普通に持っていくのは、
不可能だろうと思う。
それを抱えながら、それで幸せになれる方法を考える方が、
よっぽど現実的だし、近道じゃないか、と思ったりする。
そんなことを思ってたので、この映画がすごく響いた。
お互いそれぞれ何か抱えてるけど、
それをわかりあうことで、抱えてるものと自分との付き合い方が、
少しずつ変わっていく。
それは、ドラマチックでもなんでもなく、
他人から見たり、文章にすると、
何も起きていないかのように、見えるかもしれない。
けど、本人たちの気持ちが少し変わるだけで、
持ってるカードは同じでも、
そこに幸せが生まれてくるものなのかもしれない。
映画の中で観てる時は、「カップルにならないで」と思った二人だけど、
この映画の数年後、ひょんなところで再会して、
そこからカップルになるんだったら、それもありかな、と思ってしまう。
きっと、ワシ、この二人が映画終わっても、存在してて欲しい、
この二人の時間が映画の中だけで終わってほしくない、
と思ってるんやろうな。