またひとつ、大切な沖縄の映画に出会えた。BBBムービー「コザママ♪うたって!コザのママさん!!」。
ワシの異常なまでの沖縄贔屓、特にコザの町への偏愛を差し引いても、
ええ映画やと思った。
観る前は、笑って、ちょっとキュンと来るタイプの映画やと思って、
そういうのを期待しながら観に行った。
最初は、まさにそういう感じで、
いかにも沖縄にいそうな女性、いそうな男性、
ありそうな話で、クスクス笑ってた。
それだけでなく、沖縄の抱える問題も流さず、きちんと向き合ってて、
「予想以上に骨太な映画かも」と気持ちが変わりつつあったとき、
ジョニー宜野湾さんが、歌い始めた。
さらに、一段と空気が変わった。
それはコザ暴動を歌った曲だった。
「この映画はただのコメディじゃない。
本気で、今の沖縄を描いてる映画だ。」
知らない間に身を乗り出しながら観ていた。
最後は、涙をこらえながら観ていた。
難しい現実を見つめながらも、
誰一人不幸にならない。
幸福とまでは言えない脇役の人もいるけど、
映画の中で、少し考えを改めているのがいい。
「ハッピーエンド過ぎて、リアルじゃない」と言われるかもしれない。
だけど、現在も、なかなか希望を持てない現実を生きている
沖縄の人も少なからず、いるだろう。
そういう人たちに、少しでも希望を持って欲しい、
という祈りを映画に感じたのだ。
だから、この映画は、これでいいのだ、
と、ワシは思った。
ひとりひとりの登場人物の抱える悩み、
それぞれ違った苦しみを描き分けてるのも、今の時代らしい。
主人公の四人、そして、そのうちの三人のパートナーや家族、
みんなが、愛おしくなって、幸せになってほしい、と願いながら観ていたので、
そういう意味でも、この終わり方は、嬉しくなった。
いくつも印象的な言葉があった。
中でも、頭に残っているのは、
「素人だから芸を極められる。」という言葉。
これは、ワシが最近よく考えていることと重なる。
芸術の「プロ」だとか「その道で食ってる」ことが、
手放しで、すごいことなのだろうか。
ほんまにすごい人もいるだろうけど、
それで食うために、やりたくないこと、
自分の目指す場所ではないものをやらざるを得ない人も
いるのではないだろうか。
自分のやりたいことだけをやるために、
アマチュアリズムにこだわり続けて写真家の植田正治さんを思い出した。
そして、この映画の鍵となっている音楽、
歌詞もメロディも編曲も、すべてがいい。
沖縄民謡ではないのに、今の沖縄をすごく感じる。
ラップですら、沖縄じゃないと生まれないものに感じた。
「誰がやってるんだろう」とクレジット目を皿にしたり、
珍しくパンフレット買ってみたりしてると、
歌詞は監督の中川陽介さんで、作編曲は、沢田穣治さんだった。
「沢田さんなんやあ!」
パンフレット読んでると、沢田さんと中川さんは、古くからの付き合いらしい。
他にも、那覇の桜坂アサイラムでお世話になった、森脇将太さんや、
知ってる名前が、複数出てきたのが、
好きになった映画だけに、すごく嬉しかった。
もちろん、映画の舞台になってるコザの銀天街も、大好きな町だし、
パークアベニューが映ってるのも嬉しかった。
つまり、いろんな意味で、
ちゃんと今の沖縄でないと、できないリアルな沖縄の話になってた。
またひとつ、大切な沖縄映画が生まれた。
ああ、銀天街にまた行きたい。
銀天街をうろついて、疲れたら中乃湯でひと風呂浴びて、
また銀天街戻って、酒飲みたい。
ちなみにサントラ版のジャケットデザインは、
水田十夢くんだそうです。