どかどかうるさいスゴロクツアー。

福岡は警固に「スゴロクモーター」という、ろくでもない店がある。
なんせ客がつけた「良心的なぼったくりバー」とうキャッチフレーズを
店長が気に入ってるのだ。
ろくであろうはずもない。

ところが、というか、だから、というか、
ここ数年、ワシが飲みに行く回数ベスト3に必ず食い込む店なのである。
大阪在住なのに。

ワシはその店では「結構よく大阪に出張する人」という扱いをされている。
そのスゴロクモーターに一冊の写真集が置いてある。
表紙は満面の笑みを浮かべたワシの写真。

ここの店長が「年に1回くらい沖縄で気兼ねなく酒飲んで、泳ぎたい」と
常連客を募って沖縄旅行を企画するのだ。
団体行動が苦手で大抵一人で沖縄に行くワシだが、
このツアーには2度も参加している。
ワシがろくでもないダメ人間であることの何よりの証拠であろう。

過去2回の「ほんとーく」について嬉しいことに周りの人々からお褒めの言葉を沢山頂いたが、
中には「かっこ良すぎるのではないか」「ちゃんとした人が書いてるみたい」
果ては「うそつき」という意見まで(主にこの店の常連から)頂いたので、
今回は、このろくでもないツアーについて書いてみよう。

初めて参加したのは2010年。
前日福岡に用事があったので、他の参加者と一緒に福岡空港から飛んだ。
沖縄は台風が近づいていて「飛ぶかどうか」という状態だったが、なんとか那覇空港に着き、
途中のスーパーで「ほんまに2泊3日か?」というくらい大量の酒を仕入れ、
総勢10名くらいのレンタカーは残波岬のリゾートホテルに向かった。
ワイパーがフル稼働しても前が見えないくらいの大雨、
「海もプールも観光も嫌だなあ」と心の中で思っていた。

どうやら全員同じ思いだったようで、
ホテルの部屋に入った途端、そこらかしこでプシュッという音が聞こえる。
女性陣も男性陣の大部屋に来て、酒宴が始まる。
「せっかく沖縄に来たんだから雨でもどっか行こうよ」という人は誰もいない。
さすが、飲み屋のツアーだ。主眼は酒のようだ。

見る気もないテレビをつけ、誰も興味のないゴルフを見ながら、
「石川遼くんは若いのにしっかりし過ぎてて腹立たしい」
「そうだそうだ」と意気投合する平均年齢でも石川遼くん(当時)の倍くらいある男女。

時間が深くなると、オリオンは島酒に変わる。
最年少の女性に魚肉ソーセージを食べさせて、ゲラゲラ笑う50代。

気がつくと、昼の3時頃から晩の11時頃まで飲み続け、
部屋から出たのは氷を買いに行っただけ。

「あ、晩飯どうする?」
「もうホテルのレストラン開いてないし、誰も運転できない」
「第一腹へってない」
「それもそうか」

こうして着いた日は全員が泥酔、ホテルから一歩も出ないまま終わったのであった。

二日目、少し晴れ間が出て来て、泳ぐもの、昼寝するもの、
死んだように無防備に眠る猫を観察するもの、
誰もが勝手に好きなことをしている。
よかった。全員団体行動ができないようだ。

この猫のように無防備で無秩序な感じが、
ワシでも参加できる理由なのかもしれない。

全員での団体行動は飯を食いに行くときだけだ。
昼飯は仲泊の「シーサイドドライブイン」へ。

いかにも田舎のダイナーズといった風情のアメリカンなだだっ広い店内に熱帯魚の水槽、
ジュークボックス、目の前は海、というシチュエーションはワシのお気に入りだ。
しかも、ここのフィッシュバーガーやクラムチャウダーが安くて絶品なのだ。
気がつけば、昨日ホテルに入ってからちゃんとした食事をしてないワシは、
ガツガツかぶりつく。

この店でもメンバーの行動は勝手気ままで、
アメリカンな店のジュークボックスで「石川さゆり」とかかけてゲラゲラ笑うもの、
店内に陳列されたプラモデルなどを大喜びで見て回るもの、
たぶん、軍隊に入れる人間は一人もいない。

夜はホテルの近くの読谷物語

ここも、何を食ってもうまい店なのだが、
いつもは少人数で来るので、今回のような大人数だと
今まで食ったことないメニューが食えるのが嬉しい。
そしてホテルに帰れば、また昨日と全く同じメンバーで
全く同じようなアホ話題の部屋飲み会。
福岡で見るスゴロクモーターの風景となんぼも変わらん風景をわざわざ沖縄で見てるだけだ。

翌朝、あれほど買い込んだ酒類はきれいになくなっていた。
帰りの飛行機は、来るときに遭遇した台風が福岡付近に迫っていて、
またも飛ぶかどうか微妙だったが、何とか福岡に着き、
雨や風の吹きつける福岡市街から逃げるように、新幹線で大阪に帰った。

翌朝起きると、今度は同じ台風で大阪が大雨。
沖縄、福岡、大阪と同じ台風に3回遭遇するという
貴重な体験をした第1回目のツアーだった。

そして第2回目、2011年のツアーが冒頭に紹介した写真集だ。
今度は大阪から参加したワシは、福岡組より少し早く那覇空港に着いたので、
到着口の前で現地のツアコンの振りをしてお出迎えしたのであった。

元々、沖縄を歩いてて、ウチナンチューにウチナーグチで話しかけられる
ウチナーヂュラのワシ、周りの人にも不自然に見られることもなく、
ツアーの皆さまを無事にお迎えした。

去年と打って変わった好天に恵まれた2011年は、
ドライブも気持よく、ツアコンの使命を勝手に帯びたワシは
思い切って美ら海水族館まで遠出して、
備瀬のフクギ並木も案内した。

皆さん、それなりにお楽しみ頂けたようだったが、
去年と同じ残波岬のホテルに帰ると「遠かった」「飲む時間が少なくなった」などと
文句が言うやつが何人もいやがる。
今年も無秩序だ。
「もうツアコンなんてやらん!」と固く心に誓ったのであった。

次の日も天気は良く、ワシも珍しくプールに入ったりした。

もしかしたら沖縄で初めてのリゾートホテルでのプールかもしれない。
ワシ「へ~沖縄にもこんな楽しみ方があったんや~」
メンバー「これが普通!」
そうなんか。

晩飯は読谷物語近くのフィッシャーマンズウォーフ
東シナ海に沈む夕陽を見ながら飲む生ビールは絶品。

ワシ「へ~沖縄にもこんな楽しみ方があったんや~」
メンバー「これが普通!」
そうなんか。

晩飯のあと、メンバーの一人が「民謡酒場に行ってみたい」と言い出し、
希望者で読谷の「一番友小(ドゥシグワー)」さんに。

メンバー「へ~沖縄にもこんな楽しみ方があったんや~」
ワシ「これが普通!」
そうなんよ。

最終日、「もうツアコンはやらん!」という決意を軽く覆したワシは、
最後の昼飯にタコライスを食うことを提案。
賛同を得て、コザのパークアベニューの「チャーリー多幸寿」へ向かう。

ここは内装が昭和っぽくて好きな店なのだが、ワシのミッションは違うところにあった。
食後「ちょっとすぐ近くに寄って欲しいところが」。
ワシは福岡に帰る他のメンバーとは別行動で、
マイホームタウン、コザにもう少し滞在することにしていたのだ。
デイゴホテルの前まで送ってもらったワシは、
福岡組に手を振りながら、ツアコンとしてみなさんに
喜んで頂いた幸せに包まれていたのだった。

そのあと、車内でどんな罵声が飛んでいたかには、全く興味がない。

その後、ワシはスゴロクツアーに参加していない。
2012年は、どうしても外せない私用があり、
2013年は、ぼったくり店長の手配ミスで中止になってしまったのだ。
来年は是非再開して頂きたい。
あの「車で移動中にトイレ行きたくなったらどうしよう」てことくらいしか
ストレスのない、3日間を過ごしたい。

ひとつだけ、ワシがメンバーについて疑っていることがある。
みんな「あそこのホテルの朝食はおいしい」と言うのだが、
ワシは、そんなもん食ったことがない。
あそこは素泊まりのホテルだと思う。
みんなして朝の弱いワシを騙して、何のトクがあるのだろうか。
「朝食券」は見たことあるが、
ワシを騙すために福岡で作って来たに違いない。

こんな「すごく、ろくでもないツアー」、略して「すごろくツアー」、
あなたも参加しませんか?
現地参加も、受け付けております!(たぶん)

沖縄の出版社「ボーダーインク」のウェブページのコーナー「ほんとーく」用に
書き下ろした文章ですが、
そのコーナーがなくなってしまったので、ブログに再録いたします。

今年のスゴロクツアーは、なんと!
伊江島まで足を伸ばし、
ツアー史上、最も印象深い感動的な
ものになりました。
やっぱり現地の人と人間的なやりとりあると、
カラーが変わるもんやなーと、
実感いたしました。(20161020記)

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