梅雨の合間の奈良紀行。

今日は、ずっと行きたかった奈良国立博物館の「聖徳太子と法隆寺」展へ。
今、奈良国立博物館は予約制(空きがあれば当日でも入れる)で、
なんでか忘れたけど、14:30に予約してた。
梅雨のさなかなので、雨が降ったら、博物館だけ行こうと思ってたが、
梅雨、休みまくりの青空。
とりあえず、行き先決めずに奈良に向かい、
電車の中で、奈良公園の南側、
奈良市で言うと、東の山麓、山の辺の道の終点あたりに行くことにした。
ここなら、奈良国立博物館まで、歩いて行ける。

最初に向かったのは白毫寺。ここは、萩と椿が有名なので、
ちょっとオフシーズンかもしれないが、
山の中腹にあるお寺なので、この天気なら、眺めがええやろ、と踏んだのだ。

白毫寺の石段から見下ろす風景がもう気持ちええ。
これは、眺め、期待できそう。
石段は30段くらいかと思ったら、
一度折れて、まだ続いてる。
ちょっとしんどかったけど、その分、
景色が良くなると言うことやろう。
石段の隙間から映える雑草が、
なんとなく奈良を感じさせる。
京都の完璧さに比べると、やや隙のある感じ。
「老後に住むなら京都より、奈良かな」と思ってしまうのは、
こういうところかもしれんな。
もう初老やけど。
石段上り切ると、ほら!奈良市内が一望できる。
正面には生駒山。ド正解じゃないか?

境内には、紫陽花が花盛り。
一応、花も見られたな。
赤や、白や、桃色や、赤と白のマーブルの花を咲かす五色椿は、
もちろん咲いてなかったが、
足元の苔とお地蔵さんが、かいらしい。
狂い咲きかな?ピンクの萩らしき花も咲いている。
志貴皇子の挽歌の碑があり、その歌に少しグッと来る。
天智系であったため天皇になれず、不遇の生涯をおくった方だが、
天武系の皇統が途絶えたため、子どもが天皇になり、
今の皇統に繋がるお方である。
(説明書きだけ撮って、肝心の碑を撮るのを忘れてしまった。
志貴皇子、すみません!)

境内を歩き回る。
山麓にあるので、境内にも斜面が多く、
そこに、いくつもあるお地蔵さんが、
奈良大和路らしさを感じさせる。
けっこう、苔も見事だ。
苔があって、盆地の東側、ということで、
なんとなく銀閣寺とか法然院など、
京都東山山麓のお寺を思い出したりする。

そして、お目当ての奈良市内の眺望。
こりゃ抜群!!
これは見飽きないわ。
石段上りで少し火照ってたのは、おさまっていたが、風が気持ちいい。
石段登って、境内ひと回りしてから、ここに来たことを少し後悔。
まっすぐここに来て、火照りに風を当てればよかった。
空を覆うような青紅葉も美しかった。
新緑の奈良、なかなかええぞ。
なんとなく去り難く、また石段の上から、写真を一枚。
聞くと、100段ほどの石段らしいが、
登りより降りの方が、ワシにはキツイ。
登りは筋肉に来るけど、降りは関節に来る。
疲れないけど、時間かかるのだ。
石段降りて、少し歩くと山の辺の道。
お昼が近い。
昼食を探しながら、山の辺の道を北に向かおう。

白毫寺から坂を降りて山の辺の道に向かう。
北側の家が途切れると若草山が覗く。
ええ感じやなあ。
この辺に住みたいなあ、と少し思うが、
毎日となると、坂がきついな。
残念やけど、前言撤回!
山の辺の道は、基本真っ直ぐなんだけど、
少しくねってて、古い家屋が多く、
めっちゃええ感じの風情。

そのええ感じの町並みのええ感じの民家に看板が。
糀料理の「えん」というお店だった。
ここでお昼にしよう。
メニューは糀プレートと糀カレーの二種類。
迷うが、いろいろ食べてみたくて、プレートを選択。
大正解!!紫陽花をあしらったプレートが出てきて、
どれを食べても美味い。
しかも身体に良さそう。お腹が膨れて、
静かでええ店だったので、もっと
ゆっくりしたかったのだけど、まだ先があるので、泣く泣く店を出る。

こういう風景、なんか大和路らしい気がする。

新薬師寺までは、もうすぐだとGoogle Mapが励ましてくれる。
ところどころに畑があって、見たこともない花が咲いている。
のどかだ。このコースにしてよかった。

さて、ここからは少し、美術鑑賞の時間だ。

まずは、新薬師寺
ここは、なんと言っても、十二神将だろう。
たぶん、来るのは20年ぶり以上。
「こんなこじんまりとした寺だっけ」と思いながら拝観。
だけど、その小ささが全然苦にはならない。
この状況で、人も少なくて、とても心地よい。
十二神将は、やはり圧巻。その中でも婆娑羅(バサラ)は、
代表としてよく取り上げられるし、フィギュアにもなってるだけあって、
動きの中の一瞬を捉えたような造形が素晴らしい。
ああ、また本物に会えた。
また今度来たいなあ、、。
十二神将が、それぞれ干支に対応してるのは、知らなかった。
ワシの干支、寅は真達羅(シンダラ)大将だった。
そうか、死後は大将になれるのか、とかアホなことを今、思った。
まあ、別に人の上に立ちたいタイプでもないので、
現世で大将になれなくても、何の不満もないのだが、
少しだけ、死後も楽しみになったことにしておこう。

写真美術館は、新薬師寺のお隣。
坂を降りたところにある。
今は、国立博物館の「聖徳太子と法隆寺」展に合わせて、
入江泰吉さんの撮られた法隆寺の展覧会をやっていた。
ちょうどええな。
入江さんの写真は、何度も観てるけど、やはり何度観てもいい。
奈良に惚れ込んでる気配が漂ってくるのが嬉しい。

写真美術館を出て、そのまま坂を下れば、目的地方向なのだが、
ここは、もう一度坂を登り、新薬師寺の前を通り過ぎる。
ここまで来て、寄らないのは、不義理すぎる場所があるのだ。
新薬師寺から、そこに向かう道も白塀が続いてて、ええ道だ。
しかし、その途中、白塀がかつてのワシの腹のように、膨れてるところがあった。
(ワシの腹は今でも若干膨れてるけど)
この前は、何度か通ってるはずだけど、気がついたことがなかった。
もしかして、最近のことなんだろうか。
途中には、ええ感じの建物も、いくつかある。
レストランかな。これも、前からあったかなあ。

何年ぶりやろう、20数年?
焼き物日々器に来た。

その界隈を通り、角を折れると、その行かねばならない場所がある。
ワシが、20年以上前、20代から30代の頃、
数年通ってた陶芸教室をやってる、焼き物屋さん、日々器だ。
あの頃、ホンマに来るのが楽しかった。
土をさわる喜びを感じ、前から興味あった焼き物がさらに好きになった。
先生もわかり易く丁寧に教えてくれて、アホな素人の発想を、面白がってくれた。
何より、ここで生涯の友に出逢えた。
ここで逢った数名は、今でも、酒飲んでアホな話する友だちだ。

先生は、ご健在だった。あの頃と変わらない間取り、
「すみませ〜ん」と呼びかけると、少し、戸惑ってはったが、
「橋本です」と名乗ると、すぐ思い出してくれた。
今日も教室やってて、生徒さんもいらっしゃったので、
少しの時間でお互いの近況報告。
先生もいろいろ病気されて、お年も取られてたが、
髪の毛はスカイブルーで、あいかわらず、かっこいい。
その頃の仲間に「あんなおばあちゃんになりたい」と言わしめる、
素敵なおばあちゃんになられていた。
ほんまに嬉しいなあ。
もう一度、あの頃のあんな時間を過ごしたい、と思ってしまった。
この陶芸教室で得たものは、思い出にしろ、友だちにしろ、一生の宝やなあ、
と改めて思った。
そろそろ、陶芸教室の生徒さんがお待ちかねだ。
展覧会の予約時間も近づいている。
残念だが、おいとましよう。

日々器を出ると奈良公園はすぐそこ。
そろそろ奈良名物のあれが出始める。
日々器も、扉開けてたら、入ってくることある、ってゆーてたなあ、昔。
観光客ガタヘリで、お腹すかせてるらしい。
こころなしか、痩せてるようにも見える。
このルートの途中には志賀直哉の旧宅もあって、
ここが落ち着いて、すごく好きなのだが、
今日は展覧会の予約時間が迫ってる。
残念だけど、前を通り過ぎる。
その横の庭木に囲まれた洋館のええ感じのカフェは、閉まってた。
「閉まってて良かった」と思ってまうワシは、相変わらず心が狭い。
奈良市内ではあちこちで見かける馬酔木が咲いていた。
ん?馬酔木って、もっと早い時期じゃなかったっけ?
まあ、観られてよかったとしておこう。

飛火野では一頭の鹿がずっとワシを見ていた。
観光客少ないので、期待されてるんかな。
ごめんよ〜〜!鹿せんべい、持ってないよ〜。

さあ、ようやく、奈良国立博物館に到着だ。
裏手から着いたので、旧展示館を久しぶりに観る。
和にちょっと洋の混じったええ建物だ。
公園のお店に「うどんのルーツは、奈良にあり」と書いたノボリ。
福岡人は許せないところだろう。
ワシは、どっちでも構わんけど。
さあ、メインエベント!奈良国立博物館の「聖徳太子と法隆寺」展。
予約時間の14時半の3分ほど前に着く。思いつきで歩いて来たのに、
なんてパンクチュアルなんや!すごいぞ!!ワシ。

展覧会は、素晴らしかった。
小学校の頃から、歴史好きで、
寺や仏像に目がなかったワシが、憧れていた仏像が、
次から次へと並んでいる。
ワシは、特に飛鳥仏が好きだったので、ほんまもうたまらん。
本物だ。。
夢違観音、薬師如来像、多聞天、
その多聞天に踏まれている邪鬼までが愛おしい。
美術鑑賞と言うよリ、
戦隊モノのヒーローショーに来た男の子のような高揚の仕方だった気がする。
ほんま、法隆寺、凄すぎ!!
仏(ぶつ)で言うと、一番好きな寺!!文句なし!!
いやあ、ぶつのことで、頭いっぱいになりましたが、
他にも、玉虫厨子とか素晴らしい宝物が並んでます。
皆さん、是非!!

奈良は6月20日まで、その後、東京国立博物館で、
7月13日から9月5日まで開催されます。
こういう状況なので、奈良は予約が必要(空きがあれば当日でも入れる)、
東京のときは、どんな状況になってるかわからないので、
お出かけ前にお調べください。

石畳に佇む鹿。
こいつは、チケット喰いの犯鹿ではありません。

博物館前で、少し休憩、
ベンチに座ってたおっちゃんが、後ろから鹿ににじり寄られ、
ポケットに入れてたチケットを鹿に食われてました。
ビックリして「チケットっぽかったですよ!」と言うと、
「使用済みやからええよ」と。
ホッ。奈良あるあるか?
今日は、急に暑くなったからか、
へばってる鹿もあり。

近鉄奈良駅前に戻り、喫茶店を探す。
なんかええ感じの路地から更に通路を抜けたところにええ感じの店あったんで、
行ってみるが、バーみたいで、昼間は休業。
今は夜もかな?
コストパフォーマンスも考えてドトールで涼む。

コーヒー飲もうとしてマスク外したときに気がつく。
あれ?ワシ、マスク一枚しかしてない。
普段は、不織布のマスクとその上に布マスクしてるんだが、
今日は、博物館で興奮しすぎて、息苦しくなったので(こどもか!)、
布マスクを外してたのだった。
そうや、そうや、と入れたはずのズボンのポケットを探るが出てこない。
入れるはずないけど、、とカバンも探るが、やっぱりない。
ええと、今日は、どんなマスクしてたっけ?と記憶を辿る。
ああ!京都の染色屋さんのお気に入りマスクや!
しかもけっこう高いやつ!!
焦って、コーヒーを飲み終えて、来た道を下を向きながら戻る。
ない。
やっぱりない。。
近鉄奈良駅まで着いてしまう。
博物館まで、1キロほど。
その道をずっと下を向いて歩く体力はもうない。
地下駅への階段を降りかけるが、ふと
「あ!肝心の博物館、調べてないわ」。
ググって、電話番号調べ、電話する。
駅前だけあって、騒がしく、声が聞こえにくい。
ふと電話ボックスがあるのに気づく。
よし、あの中で聞こう。
複数あるから、全部埋まらん限り、迷惑ではなかろう。
なかなか繋がらなかったが、やっとこさ、繋がると、
「どんなマスクですか?」と聞かれる。
「半分が赤で、残りが白と紺のです。」
「はい、ありますよ。どうしましょう」
「今から取りに行っていいですか?」
「お待ちしてます。」

近鉄奈良駅から博物館までは、ダラダラずっと続く上り坂だし、
「歩き終わった!」と思ったあとの追加歩きだったので、
ちょっと萎えかけたが、振り絞って、歩く。
ああ、コレや〜。良かった〜〜。

時刻は18時近く。
国立博物館を根城にしてるのか、ここで餌やりでもあるのか、
えらい鹿が集まってきてる。
「マスク落としたおかげで、ええもん観れたわ!」と負け惜しみを思うが、
なんか安心して、どっと疲れる。
下り坂なのだが、歩く気力なし。
バス停3つだが、バスで、近鉄奈良駅に向かい、
本日の大和路散策は終了となったのであった。

あ、近鉄奈良駅で、自分へのご褒美で、大仏プリン買いました。
電車が動き出した途端、
「そう言えば、新しくなってから行ってない」と思い出し、
次回は、JR奈良駅経由で行こう、と思いつつ、
平城宮の大極殿(復元)、見ながら、大阪に戻るのであった。

※たまたま翌日、テレビでやってて知ったのですが、
鹿が集まってるのは、「しかだまり」という現象で、
毎日夕方になると、どこからともなくやってくるそうです。
餌付けしてるわけではなく、原因はわからないらしいです。

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