松本壮「島で暮らして、ラムを作って、」。
ワシを伊江島に導いてくれた松本さんの本が出た。
伊江島の極上のラム、伊江ラム「サンタ・マリア」が
できるまでの奮闘をメインにした物語を松本さん自身の口で語る本だ。
松本さんは、伊江島の出身ではない。
それどころか、ウチナンチューですらなく、
長崎平戸の離島生まれで、福岡で広告代理店の営業をされてて、
不思議な縁で、伊江島の役場に勤めることになり、
伊江島の活性化に勤められた方だ。
地元の方には当たり前過ぎて、見えにくい伊江島の持つポテンシャルを見抜き、
広告代理店の経験を活かして、人に広め、
伊江島の活性化に大きく役立てていらっしゃる。
沖縄の、ではないにしろ、離島出身ということも、
特有のメンタリティーを理解するのに役立ったのだろう。
それと、彼と会った人なら誰でも感じるだろう、彼の人柄。
いつもニコニコと楽しそうで、こちらまで知らん間に笑顔になってしまう。
初対面のときから、まるで昔からの友だちのように歓待してくれた日のことは、
ワシの一生の宝のような思い出になった。
伊江村は、よくもこれだけ適任の人材を掘り当てたものだと思う。
松本さんが伊江島で作られたもののうち、
いくつかはお聞きしてたけど、
どんなふうに作ったかまでは知らなかったので、
その発想力や、展開の仕方には、同じ広告人として、舌を巻いた。
「とてもワシにはできない。」
だけど、どれも福岡でやってきたことを、そのまま移植したのではなく、
「伊江島だから、できること」「伊江島にしか、できないこと」を
ベースにしておられるのが、素晴らしい。
これぞ、地域活性化のお手本ではないか、と思う。
涙してしまったのは、修学旅行生を受け入れる話。
詳しくは、読んでほしいので語らないけど、
伊江島から戻った子どもたちの変化を読んでたとき、
急に文字が見えづらくなった。
なんで?と思うと、目をこすると、
指にべっとり涙が絡みついた。
村の経営のためだけでなく、
他県の子どもたちを育てるために、
村の財産である人材を使う。
その結果、村も潤う。
本当に素晴らしい事業をされてたんだな。
圧巻は、やはり、サンタ・マリアを「一」から作り上げて、
ヒット商品に育て上げるまでのストーリー。
科学的なことに弱いワシには、発酵のメカニズムとか、
正直わからない言葉満載のとこもあったのだけど、
端々に松本さんや開発スタッフの思いが溢れていて、
一気に読み上げてしまった。
ワシは「うめえな、これ」と思って飲んでるだけだが、
ワシの口に届くまで、コレほどの物語があったのだなあ。
と言っても、ワシは実は企業本とか、ビジネス本とかは大の苦手である。
大好きなサンタ・マリアの話でも、それ一辺倒だと、
最後まで読むのは辛かったかもしれない。
だけど、この本は、伊江村の地域活性化を縦糸にしながら、
横糸には、松本さんの家族の物語が張り巡らされている。
奥さん、三人の息子さんを苦労に巻き込んでしまう苦渋、
その中でも明るく元気に暮らす家族の物語でもあるのだ。
それだけでなく、長崎の実家のご家族、
福岡の奥さんの実家のご家族も登場する。
そして、なんと言っても苦労をともにした仲間、
そしてお世話になった人たちへの感謝の気持ちにも溢れている。
その沢山の人達への感謝の気持を形にしたい、
という松本さんの思いが、この本を創る原動力のひとつになっているのだと思う。
「知り合いの書いた本だから」と何気なく読み始めた本に、
こんなに夢中になり、
こんなに清々しい気持ちを抱かせてもらえるとは、思わなかった。
地域活性化のお手本としてでもいい、
家族の物語としてでもいい、
なんなら夢を追う男の物語としてでもいい。
ぜひ、多くの人に読んで欲しい本だと思う。
ちょっと心配なのは、こんな一生の最後に人生の総決算として出すような本を
書いてしまった松本さんの今後である。
松本さん、まだまだ人生、続きますよ!
これからもやりたいこと見つけて、
楽しく乾杯しましょうね!
それにしても、この本読んで、沖縄に行きたい気持ちは、
さらに、さらに、膨れ上がるのだった。
ご参考までに、ワシがサンタ・マリアと、松本さんと出会った経緯を書いたブログはこちらです。