映画「芸術家今井次郎」。

映画を観終わって、タイトルにすごく納得が入った。
音楽家、画家、パフォーマー、役者、造形作家、作曲家、
どの言い方をしても、それは今井次郎さんの一部を言ってることにしかならない。
そういうと「マルチアーティスト」と括られてしまいそうだが、
それも、また違う気がする。
どれをとっても、「今井次郎」という同じことを表現しているようにも思える。
まさに「芸術家今井次郎」としか表現できない人なんだと思う。

UAに楽曲提供してたり、篠田昌已グループやコクシネルのメンバーだったり、
映画にテニスコーツや石川浩司さんや佐藤幸雄さんなど
錚々たるメンバーが出演したりするけど、
そういうことで、この映画や今井次郎さんを飾るのも、間違いなような気がする。
そんな肩書き的なものより、今井次郎さんの持ってる、今井次郎さんしか持ってない
かけがえのない何かを感じるために観る映画なんだと思う。
そして、それは、ワシにとっても、すごく大切なものである、
という確信みたいなものを感じた。

天衣無縫の振る舞い、作るものすべてが作品、人間そのものも作品、
息をするように芸術している。
間違いなく天才だろう。
だけど天才にありがちな
「作品はすごいけど、人間としてはついていけない」とか
「怖くて近寄りがたい」みたいな意見は、周りからは全く出てこない。
周りの人も、みんな今井次郎さんが好きで、
すごく近くに感じてる様子が映画から伝わってくる。
末っ子の人懐っこさゆえなのだろうか。

闘病生活中の病院食アートが凄過ぎた。
かなり苦しい闘病生活だったみたいやけど、
その作品のどれもがユーモアあふれる造形で、
とても重病で苦しんでる人が作ったものには見えない。

しかし、そのあまりに夥しい作品の数に、
療養期間の長さを感じてしまい、言葉に詰まってしまう。

その入院期間中に、薬の袋や献立表に書いていた譜面が残されていた。
もちろん楽器も演奏できない状態だったのに。
その譜面を、向島ゆり子さん、近藤達郎さん、久下恵生さん、いしかわともこさん、で組んだ
「とんぷくユニット」で演奏してくれる。
その曲がまた楽しくて、とても死を直前とにした人の音楽とは思えない。

向島ゆりこさんと久下恵生さんは、今井次郎さんが組んだ最初のバンド、
PUNGOのメンバーでもあり
(このPUNGO、向島ゆり子さん、久下恵生さん、佐藤幸雄さん、
石渡明廣さん、今井次郎さん、篠田昌已さんというとんでもないメンバー)、
最後に組んでたodd(向島ゆり子さん、久下恵生さん、今井次郎さん)のメンバーでもある。
佐藤幸雄さんや石川浩司さんも出てるし、
ワシがよくライブを観に行く人たちが、こんだけ出てる映画も初めてかもなあ。

このとんぷくユニットの曲含め、すべての今井次郎さんの作品が、
まるで「ごっこ」の延長線上で、
すごく面白いもんができてしまった風情があるのが、
すごく好きや。

この映画、もう一度観に行きたいのだが、
ワシの観に行った日が大阪の最終上映で、
今後の上映予定もないみたいだ。
こんな素晴らしい映画、こんな素晴らしい人、
みんなに知ってほしいので、
是非再演してもらいたいものだ。

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