映画「アウシュビッツのチャンピオン」。
実話に基づく話らしい。
第二次世界大戦下のアウシュビッツで、
兵士たちの娯楽のためにボクシングをやらされた
ユダヤ人ボクサーの話「アウシュビッツのチャンピオン」。
実話で、主人公が戦争を生き延びたことは知って観ているので、
大まかに言うと、予想の範囲内で物語は動いたが、
ワンシーンワンシーン、丁寧に作り込んでるので、
退屈だったりすることは、まったくなく、映画として楽しめた。

ワシは残虐シーンがとてもとても苦手なのだが、わりときつめのシーンが続くと、
少しずつ「こわ!」ってのが薄れて来た。
大袈裟だが、普通の人間が兵士になって、
人を殺すことに抵抗がなくなっていくのって、こういうことなんかな、と思ったりした。
「本当に人は人を、自分より下等なもので、それゆえ殺しても構わない」と思えるのだろうか、
と言うのは、戦争におけるワシの昔からの疑問なのだが、
この麻痺する感覚というのを、戦争というのは、小狡く利用しているのであろう。
加害側の立場を考えても、人はこんなふうに、
他の人を平気で苦しめるようになって良い訳はない。
だから、やはり戦争は、絶対悪なのだ。
人間の歴史は、被害者だけでなく、加害者も作らない方向に、
動いていかなければならない。
そのために、人間には知恵があるはずなのだと思う。
ナチス兵士は、ガス室に送ったユダヤ人たちの所有物は平気で奪うのに、
ユダヤ人が一個のリンゴを盗んだことで、
平気で、撃ち殺す。
そこまで、人間は利己的になれるのだろうか。
いや、なれるんだろうな。
それが戦争なんだろう。
この映画を「特技があったから、戦争を生き延びられた男の物語」と観てはいけないのだろう。
特技があろうと、なかろうと、人間は、生き延びる権利と、幸せを追求する権利を持っている。
同じ人間が、その権利を、奪えるものではないのだ。
この映画が描こうとしてるのは、そういう普遍的な人間の価値なのだろう。